今回はジェンダーの話に絞りましたが、決してこの問題はジェンダーだけの話ではありません。
近年、「○○女子」など、「女性はこんなことやらないだろ」と従来的な偏見があった業界に女性が多数訪れたり、「新宿ゴールデン街」のように、日本人には思いもつかないような場所が観光名所になっていたり、というケースが増えています。
また、インフルエンサー(Instagramer、あるいはYouTuberを含め)が影響力を増していますが、これも「ユーザーに極めて近い当事者」が宣伝するから意味があるわけです。
当事者だからわかること、というのは確かに存在していて、それを理解するためには当事者に話を聞くしかないのです。
多分、中高年には永遠に今の10代のことはわからないでしょう。男性は女性のこともわかりません。もしかりに40代の男性が10代の女性向け化粧品のクリエイティブを作れ、と言われたらかなり困ると思います。
でも、それは当たり前のことです。私にはそれが理解できない、ということを理解していればいいのです。
多様性とは、他人の目でものを見るということであり、多様性なきマーケティングは、結局のところ独りよがりになってしまいます。
「他人の目」を失ってしまったこと、自分はなんでも理解できると驕り高ぶった決済権者が多いことが、日本のマーケティングを硬直化させ、このような炎上事例を多発させている原因ではないのでしょうか(自戒を込めて)。
女性向けマーケティングを成功させるには、もし自分が当事者でなければ、当事者(か、当事者に出来るだけ近い人)に決めてもらい、それを理解しようと務めること、そして究極的には、自分には理解できないということを理解することが重要です。
うぬぼれないこと、大事。
<文/遠藤結万 Twitter ID:
@yumaendo>
えんどう・ゆうま●早稲田大学卒業後、グーグル株式会社(現グーグル合同会社)に入社。中小企業向けセールスとアジア太平洋地域の分析を担当。退社後、スパーク株式会社を設立し、インハウス化やマーケティング戦略支援、マーケティング教育などを手がける。デジタルマーケティングについてのブログ「
エッセンシャル・デジタル・マーケティング」を運営中。著書に『
世界基準で学べる エッセンシャル・デジタルマーケティング』(技術評論社)