モリカケ事件でずさんな会計検査が発覚した日本は、コスタリカの会計検査院に学べ

最終的に政治腐敗を正すのは市民自身

会計検査院のスマホアプリ

会計検査院のスマホアプリ画面。ウェブサイトと同等の情報が得られる。また、左列上から3番目のアイコンから、疑義がある予算やその執行に関して会計検査院に直接告発できる

 政治の腐敗や行政の怠慢は撲滅せねばならない。が、そういったことが横行したときにチェックし、正す機能も強化しておかねばならない。会計検査院は、主に後者のための組織だ。  コスタリカでも、昨年セメンタソと呼ばれる政治疑獄が発覚し、行政府・立法府・司法府まで巻き込んだ、第二共和制(1948年)成立以降最も大規模なスキャンダルとなった。だからこそ、会計検査院の仕事は一層重要性を増している。  そのため、実務の一方で、市民に対する広報にも力を入れている。民主主義社会において、最終的に政治腐敗を正すのは市民だからだ。  みずからをその「剣」にしてもらうため、会計検査院はウェブサイトの構築に知恵を巡らせ、できるだけ平易な言葉を使い、できるだけ視覚的に理解できるように工夫している。視覚障害者も音声のみで情報にアクセス可能だ。基礎的な情報や重要事項は、アニメ化するなどしてYouTubeにもアップする徹底ぶりだ。  先述のように、市民は単にそれらの情報をチェックできるだけでなく、予算やその執行状況に疑念があった場合、ウェブサイトからはもちろん、スマホアプリからも告発を行うことができる。  さらには、そういった情報がネット上にあり、市民生活で使えるようにするために、会計検査員が毎日のように出張講座を行なっている。これでもかと言わんばかりの徹底ぶりだ。  日本の会計検査院がもしそのような理念と制度設計をともなっていたら、モリカケ事件の顛末もまったく違うものになっていたかもしれない。 「持続可能国家」コスタリカ 第5回 <文・写真/足立力也> コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
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