『新潮45』が生み出された社会。~反戦後民主主義者の主戦場となっている書店の平台

極右路線の『新潮45』が辿った道

 以後、特集タイトルを列挙しながら、社会で何が起きていたかを出来事を振り返ってみよう。 ●2月号(1月発売)「『反安倍』病につける薬」 ●3月号(2月発売)「五輪を『政治ショー』にしてご満悦『非常識国家』韓国」。  ※この時期、安倍首相の平昌オリンピック開会式への出席がぎりぎりまで論議されたが、最終的に安倍首相は開会式へ出席した。北朝鮮からは金与正氏らが参加している。 ●4月号(3月発売)「『朝日新聞』という病」  ※この月、朝日新聞は森友学園への国有地払下げに絡んで公文書が改ざんされたことをスクープしている。 ●5月号(4月発売)「北朝鮮『平和』のまやかし」  ※4月27日、板門店で文在寅大統領、金正恩委員長が南北会談。5月26日には予告なしの電撃的な南北会談が再び板門店で行われている。 ●6月号(5月発売)「朝日の論調ばかりが正義じゃない」 ●7月号(6月発売)「特別企画 『反安倍』ヒステリー列島解剖」「こんな野党は邪魔なだけ」 ●8月号(7月発売)「日本を不幸にする朝日新聞」  ※杉田水脈「LGBT支援の動きは度が過ぎる」はこの特集の中の文章であった。 ●9月号(8月発売)「『茶の間の正義』を疑え」「『日本喰い』中国人」「 特別企画 まだ『敗戦国』ニッポン」 ●10月号(9月発売)「『野党』百害」「特別企画 そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」 となる。  やや煩瑣だったが「新潮45」の2018年1月号以来の特集、特別企画の表題を並べてみると朝日新聞攻撃、韓国・北朝及び中国への敵意を煽る内容と、野党攻撃に終始していることが分かる。『WILL』や『HANADA』と似た内容で執筆者も重なる。これに春先から夏に至る出来事を並列してみると以下のようになる。

笛吹く者と踊らされた人々による「圧力」

 杉田水脈議員が人文系研究者に対する科研費が攻撃対象としたツイートを繰り返したのは4月初旬であった。これは、科研費申請の仕組みをまったく理解していない誹謗中傷の攻撃であった。  また和田宗政議員が、ツイッターで大学教員二人の名を上げたうえで、「大学の教員たる人物が論評を超え誹謗中傷をするのはいかがなものかと思うが社会常識が通じないのだろうか。良識ある方々ぜひこうした人物のツイッターを見てみてください。」と非難したのは4月27日であった。  名指しの非難は、発言者自身の意思とは別に、往々にして攻撃対象を示す役割を果たす結果を生む。その結果、こうした主張のシンパによるSNSを使った直接の言葉による脅迫、ツイッター社への集団的な「通報」などが行われるようになるのだ。  和田議員のツイートと爆破予告の因果関係は推測の域を出ないが、GWの大型連休明けに、このツイートで名前が上がった2人の大学教員の勤務校が爆破予告を受けた。(参照:青学大に「殺害予告」=5月も「爆破」書き込み-東京 時事通信)  和田政宗議員が名指した大学教員のひとりは私であった。警備上の理由から今ここで爆破予告にどう対処したのかは詳細を記すことはできない。爆破予告の原因が自分であると考えるのはいささかうぬぼれが過ぎるかもしれない。また、繰り返すが和田議員のツイートと爆破予告の因果関係は推測の域をでない。しかし、推測の域を出ないという事実が漠然とした不安と懐疑を生み、直接に脅迫されたり危害を加えるよりも自己規制を生みやすい。和田議員のツイートから勤務校への爆破予告に至る経緯は、たまたま名前が出ていたのが私自身だったので、詳細を承知しているが、同じような不安と懐疑を呼び起こす事案はSNSの中で無数に起きているに違いない。  事実、昨年の衆議院選挙の頃から差別発言を批判的に引用したことを理由に、リベラル系のアカウントが不当に凍結されたり閉鎖される例も多数、起きている。  4月20日に開催された自民党の都道府県県議会議員と政令都市の市議会議員を対象とした研修会では小川榮太郎「徹底検証『森友・加計事件ー朝日新聞による戦後最大の報道犯罪」が約800人の出席者全員に配布されたと文藝春秋6月号の「赤坂太郎」が報じている。 「世論の反発が強い森友・加計の対処のため」だと指摘している。  そして、7月に、『新潮45』8月号「特集 日本を不幸にする朝日新聞」で、杉田水脈議員の「LGBTには生産性がない」と差別発言を含む文章が掲載された。この記事はもともとは朝日新聞攻撃の一環だった。  8月に入ると『WILL』『HANADA』などが大手新聞に下段ぶち抜きの広告を打ち、書店には安倍晋三礼賛本が並ぶようになっていた。  私は8月下旬に『枝野幸男 魂の3時間大演説』(扶桑社)を小倉駅構内の書店で購入したのだが、立体展示されたその本の周囲は安倍晋三礼賛本で埋め尽くされていたことを記憶している。  そして9月。自民党の総裁選挙が行われるなかで、前年の衆議院選挙で自民党中国ブロック比例代表名簿実質1位に杉田水脈氏が指名されていたことを、告示日まで石破茂氏が承知していなかったことが明かされている。『新潮45』10月号が「特別企画 そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載したのは自民党総裁選の最中であった。
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「安倍支持本」から見えてくるもの
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