出遅れた玉城デニー候補とオール沖縄陣営。総力戦で来る政権・佐喜眞淳陣営。沖縄県知事選今日告示

渡瀬夏彦
 翁長雄志知事の急逝を受けて、当初の予定(11月18日)より1か月半以上も前倒し(9月30日)で実施されることになった沖縄県知事選。

 この選挙に国政選挙以上の意気込みで圧力をかける安倍官邸によって、「オール沖縄」が守ってきた沖縄県知事の椅子を奪われてしまうのか、否か。政府と国政与党からの尋常ではない圧力を撥ね返し、亡くなった翁長知事の「辺野古新基地建設阻止」をはじめとする遺志を貫徹するため、「沖縄の底力」がこの瀬戸際で、果たして発揮されるのか。それが最大の注目点というべき選挙であるといえる。

 告示日を目前にして、玉城デニー氏擁立の渦中にいたノンフィクションライター、渡瀬夏彦氏に緊急リポートを寄稿していただいた。

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 政府による辺野古新基地建設強行の問題は、沖縄県民にとって言うまでもなく重要であるが、しかしこれは「沖縄だけの問題」であるはずもない。長い間沖縄に基地を押し付け続けてきた(現在でも国土の0.6%の沖縄に在日米軍基地の70%が押し付けられている)全国の人びとが、わが事として考えるべき問題である。

 そして、このテーマが最大の争点となるべき沖縄県知事選挙は、9月13日告示、30日投開票である。

 じつは本稿は、前哨戦とも言われる9月9日の統一地方選挙の県内各地の開票結果を見届けたあと、一夜明けてから、名護市東海岸某所の友人宅の居間を借りて書き始められている。

 今回の統一地方選において、まず取り上げるべきは、名護市議会議員選挙だった。

 知事選リポートの本稿で、様々な市町村議会議員選挙に触れることは不可能なので、名護市のそれに絞って述べることをご了承いただきたい。

 2018年2月の名護市長選を少し振り返っておく。

「オール沖縄陣営」の慢心と与党側の総力戦で敗れた名護市長選

 辺野古新基地問題を争点から外す戦術に出た渡具知武豊候補(現市長)が、ブレない信念で「海にも陸にも新しい基地は造らせない」という公約を8年間守り、基地建設受け入れと引き換えの交付金に頼らない健全な財政を築いた稲嶺進候補(前市長)を破った。

 はっきり言って、当初はほとんどの人が想像もできなかったといって過言ではない大差での敗北だった。

 “実績も人格も申し分のない、あの立派な市長が、さしたる実績も認められない基地推進派の一議員にすぎない候補に負けるわけがない”。

 翁長県政と稲嶺市政を支えてきたいわゆる「オール沖縄」勢力には、そのような楽観ムードが選挙戦の告示前に広がってしまっていたのだ。

 もちろん敗因は多岐にわたる要素を分析すべきだが、「辺野古新基地・争点ボカシ」「現職陣営の油断」「資金潤沢な安倍政権・国政与党による組織戦」の3つは忘れてはならないだろう。

 おそらくは、知事選においても、安倍官邸・自民本部と公明本部はなりふり構わず沖縄県民に圧力をかけてくる。名護市長選で味をしめた「勝ち方」を全県規模で展開しようとすることは間違いない。

 すでに自民・公明の幹部は繰り返し沖縄入りしているし、公明党はこの知事選に全国から数千人規模の動員を図ると言われている。

 名護市長選のときも、最大の争点になるはずの大問題を隠して辺野古の「へ」の字も言わない作戦に出た。なんとしても、稲嶺市長を追い落とすため、「あらゆる手法」を駆使した。

 小泉進次郎に名護市で何度も演説をさせて若年層へのアピールに力を入れ、目先の生活向上策を徹底して宣伝したし、また創価学会はトップが早くから沖縄入りして、県内幹部に発破をかけることまで断行した。菅義偉官房長官が自ら地元企業の社長に電話をかけたというのも、名護で広く知れ渡ったエピソードである。

 4年前は自主投票だった公明党の沖縄県本部は、基本的な政策として「辺野古反対」の姿勢は崩していないのだが、結果的に中央の自公協力が編み出した「争点ボカシ路線」にいとも簡単に飲み込まれて集票マシーンと化してしまった。

 この戦術は、今回の沖縄県知事選にも間違いなく応用されるだろう。つまり、この知事選は、安倍政権が沖縄県知事の椅子をぶんどるために沖縄県民に襲い掛かってきている選挙、なのだ。

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「敵地」のみで行われた討論会

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