各家庭にディスポーザー設置が無理な場合は、共同ディスポーザー設置の提案も(国交省資料より)
年々増え続ける紙オムツの処理には、地方自治体も頭を痛めている。水分を多く含んだ紙オムツは焼却炉を傷めるばかりではなく、まとめて入れると炉の温度を下げるという厄介な存在なのだ。そのため地方自治体の中にはリサイクル方法を模索し、実施しているところもある。
①人口1万4000人の福岡県大木町は2011年11月から町内54か所に回収ボックスを置き、家庭から排出される紙オムツを町が週2回回収している。回収量は年間84万トンで、回収された紙オムツは上質パルプ、低質パルプ、廃プラRPF等に再生され、それぞれ建築資材や土壌改良材、燃料として利用されている。
②もともと家庭ごみを27分別していた鹿児島県志布志市は、2016年11月から家庭の紙オムツも分別回収する「使用済み紙オムツ再資源化事業」を実施している。同事業はユニチャームが2015年に開発した紙オムツから再生した上質パルプをオゾン処理することによって、再び紙オムツに再生できる技術を利用しているという。
③島根県伯耆町では2016年から町が病院や介護施設から週5日、使用済み紙オムツを回収しペレットに再生。町営温泉施設の燃料として利用している。このリサイクル設備は7000万円台で導入したもので、自治体は介護施設等から回収した紙オムツを、ビニール袋ごと機械に入れるだけだという。
こうしたリサイクルの芽が育ちつつあるのに、わざわざ紙オムツを粉砕して下水に流すという政策を打ち出してくる意図が理解できない。何よりも、世界的に問題となっているマイクロプラスチックによる海洋汚染を防ごうという意思が、少しも感じられないのだ。
<取材・文/上林裕子>