持ち家ばかりではない。賃貸住宅を選ぶ際も、この「目に見えない部分」を意識することは同じく大切だ。むしろ賃貸の場合は、自分で手を入れられる要素がかなり限られてしまうため、持ち家以上に選ぶ際にこだわった方がいい。賃貸契約者へのアンケート調査では、ある興味深い結果が出ている。
家賃と広さ、駅からの距離が同じ場合「賃貸を選ぶ際に何を重視するか」という質問では、上位に「間取りが好み」「住宅設備がきれい」「内装が好み」といった目で見てわかりやすい項目が並ぶ(複数回答可)。一方で「遮音性能」や「断熱性能」の優先順位はかなり低い(リクルート住まいカンパニー調べ 首都圏、2017年)。
ところが、実際に住んだあとの不満点は逆に「遮音性」「断熱性」が上位になっている(リクルート住まいカンパニー調べ 全国、2016年)。
別の調査でも、不満の多い順に「上階の足音や声が響く」、「断熱効果が弱く、夏暑く、冬寒い」、「風通しが悪く、湿気がこもり、カビがはえやすい」、「壁が薄いため、隣室や外の音がうるさく、室内の音も外にもれる」など、「遮音性」「断熱性」に関連する項目が並ぶ。
賃貸住宅の不満点。LIXIL住宅研究所「賃貸住宅の不満に関する調査報告」、2015年より。
さらに、断熱性能の悪さによる暑さ、寒さ、結露、カビなどへのストレスによって、引っ越しを検討する人が3割もいることもわかっている。見えやすい部分ばかりに気を取られて契約するが、住んでみると見えない部分の性能が響いてくるということだろう。
筆者もこの省エネ住宅に住むようになるまでは、都内の賃貸アパートで暮らしていた。暑さや寒さ、結露やカビなどは、ある程度覚悟していたものの、実際に暮らしてみると想定以上だった。
この環境に長期間耐えられないと感じて、持ち家を探した経緯がある。なお、断熱性能がしっかりしている家は遮音性能も高いので、対策をとれば両方の不満が解消できるようになる。