保育園や子どもの医療費を「再編交付金」で支払う愚策
渡具知武豊さんは今年2月の
名護市長選で
「子どもの給食費を無償化する」という公約を掲げ、名護市議に当選しました。稲嶺進さんが
「子どもの給食費の無償化を目指して基金を作る」としていたのに対し、即効性を強調していたことが名護市民に評価されたのです。
実際、渡具知武豊さんは公約を果たすために子どもの給食費を無償化するために動いており、中央政府に
「再編交付金を前倒しで出して欲しい」と陳情に行きました。
「再編交付金」とは、基地を作るにあたって、政府から渡される
「ご褒美マネー」のこと。さらに、渡具知武豊市長は優秀な人間を派遣してほしいと政府にお願いして、内閣府から32歳の男性が派遣されました。いまや議会における答弁は渡具知武豊市長ではなく、ほとんどを内閣府の32歳エリート官僚が答えるようになっています。つまり、地域振興策をどのように進めるのかを考えるのが市長ではなく、内閣府から派遣されてきた男なので、すべてが政府の意向に沿う形になるのです。
地元のアイディアを捨て、政府の言いなりになる街づくり。これも名護市民が
「選挙で決めたこと」なので、ある意味では
「民意」なのですが、結果として名護市民が苦しむ日が来ても、その時はその時です。
ただ、名護市にはこれに抵抗しようというベテラン議員も存在しています。沖縄の貧困率は非常に高いので、確かに給食が無料になるのはありがたい話なのですが、名護市議を40年も続け、辺野古基地問題がここまでこじれる遥か前から議員をしている大ベテランの大城ヨシタミさんは、
「子どもの給食費を再編交付金に頼るなんてとんでもない」と反対しています。
その理由は単なる感情論ではありません。
再編交付金は基地建設中にしか支払われないお金であり、政権が変われば続くかどうかも分からないような不安定なお金です。このお金に頼って子どもたちを食べさせるようになれば、今まで以上に基地に依存しなければならないし、基地が完成した後、名護市は子どもたちをどうやって食べさせていけばいいのか。今が良ければそれで良いという考え方をするのではなく、しっかりと自立した経済を持たなければ、今よりずっと経済が悪くなって、本当に子どもたちを食べさせなければならない時代がやって来た時に、子どもたちを食べさせることができなくなってしまうというわけです。
大城ヨシタミさんをはじめ、かつての稲嶺進さんと歩調を合わせて辺野古基地の建設に反対してきた議員たちは、名護市議会では渡具知武豊さんの提案にあらゆる反対の手を尽くしていますが、渡具知武豊さんもあらゆる手を尽くして基地交付金を活用する
「渡具知流」を進めようとしています。