「うち水」を昼間にアスファルトにまくと、逆に蒸し暑くなる
ドイツのオフィスビルの窓を見ると、日本とは違う……?
日本の暑さ対策は実に的はずれだ。例えば、小池都知事は2年後に迫った東京オリンピックの猛暑対策として「打ち水のほか、浴衣、よしずの活用など、日本ならではの対策を」などと発言している。これらはいずれも、時代も状況も異なる江戸時代に行われてきたことだ。
言うまでもなく、当時は地面がアスファルトに覆われていなかったし、高層ビルやマンションが乱立してヒートアイランド現象が起こることもない。何より、気温が30℃にもなれば猛暑と言われていた時代のやり方ということを忘れてはいけない。
「うち水」は朝方や夕方などに土にまくもので、日差しの強い昼間にアスファルトに水をまけば、むしろ周囲の湿度が上昇して蒸し暑さが増す。「浴衣」は実際に来てみるとわかるが、見た目には涼しくても体感温度は高くなる。
この中で最も効果のあるのは「よしず」だが、伝統的な使い方である「窓を開け放ち、よしずで直射日光をさえぎる」だけでは、40℃近い暑さには焼け石に水だ。こんな効果の期待できない対策ばかりでは、今後も暑くなれば熱中症患者がふえるだけだろう。どうすれば効果的に暑さを和らげることができるのだろうか?
窓から入ってくる「夏の暑さ」対策には、窓まわりの見直しを
「よしず」では、今の日本の暑さに対応しきれない
まずは、多くの人がもっとも時間を過ごす室内環境を改善することだ。根本的に建物を暑さに強くする方法としては、屋根や壁、床に断熱材を入れるといった対策も考えられるが、コストも時間もかかるため気軽には始められない。
そこで紹介したいのが、もっともコストパフォーマンスが高く手軽に始めることのできる、「窓まわりの見直し」だ。外の熱気は屋根や壁などからも入ってくるが、家全体として考えたときに、実に73%もの熱気が窓を通じて室内に入ってくる。
※このときの条件は、外気温33.4℃・室温27℃でアルミサッシ複層ガラス(ペアガラス)の場合。
夏の暑さは窓から侵入する
住宅にしても公共施設にしても、この窓からの熱気を防ぐことが、より快適な空間づくりのカギとなる。窓まわりでできることは主に3種類で、「窓の外側」「窓の内側」「窓そのもの」と分けられる。総合的に取り組むことで、夏の室内環境はかなり改善される。