アメリカの場合、チームスポーツに絞ると高校でプレーする男子は37%、女子は30%にすぎない。「部活に所属する」という意識が強い日本との大きな違いかもしれない。
続いて人気種目だが、前出の男性が話してくれたように、7歳までは野球とサッカーが人気。しかし、その後はバスケが急浮上して一番人気に。17歳になるころには、バスケ、野球、アメフト、サッカーという順番に変わっているようだ。
思春期世代の男子では40%がアメフトとバスケを。24%が野球、20%がサッカー、17%が陸上競技をプレーしている。合計が100%を超えているのは、アメリカではスポーツは「シーズン制」となっており、季節によって違うスポーツをプレーすることが当たり前だからだ。ちなみにその後はレスリング10%、水泳9%、テニス8%と続いている。
こうして見ると、日本では学校の部活でプレーしながら、大規模な全国大会を目指す……という特徴があるのに比べ、アメリカ映画でもハイスクールの人気者がアメフトをやっているシーンがよくあるように、部活はあるものの、高校生まではさまざまなスポーツを横断的に楽しもうという姿勢のほうが強いようだ。
そのため、高校野球の甲子園大会や高校サッカーで真夏や真冬にスタジアムが埋まり、テレビも放送されて連日ニュースで取り上げられるという状況は生まれにくいのかもしれない。高校レベルでの大会の規模や人気っぷりという意味では、やはり日本の高校野球は特異な例なのだ。
道具やプレーする場所が学校に入るだけで確保されるというのも部活制度の利点のひとつだろうし、「頑張って甲子園に出ればプロへの道が」と明確な目標設定がしやすいのもプレーする選手にはいいだろう。
しかし、ともすればそれは若くして燃え尽き症候群に陥るリスクもある。また、日本の学生スポーツでは縦割りや上下関係重視の要素が強いため、顧問や上級生によるパワハラや協会内部での権力闘争が起きやすいというデメリットもある。学校が基板の部活制度では、ひとつの種目からドロップアウトしたとき、他のスポーツへの乗り換えもアメリカに比べて難しいだろう。
このように学生スポーツには大会規模だけでは計りきれない要素が無数にある。人気があるのならば、それだけ選手のケアにも力を入れるべきだし、何より競技に縛られず自由に将来を選択できるべきだ。悪い部分は見直し、いい部分は取り入れる……。どの国でもよりよい環境を整えるのは大人たちの責任だ。
<取材・文・訳/林泰人>