このときのように握手する日が再び来るか? Official White House Photo(Public Domain)
トルコリラの大暴落を招くなど、トランプ大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領の確執がますます悪化している。
ただ、この確執は突然発生したのではなく、これまでトルコと米国の間でさまざまな背景が以前から存在していたという事情があってのことである。また、両者とも周囲の助言に耳を貸すことは少なく独断的な決定を下す傾向にある。それも今回の確執に加算しているようだ。
イスタンブールの前市長だったエルドアンが2002年に公正発展党(AKP)を率いて首相として政権に就いた時のトルコは、まだ国際舞台に登場してはいなかった。
トルコは、1952年から北大西洋条約機構(NATO)に加盟しているとはいえ、1960年から1997年まで4度の軍事クーデターを起こした軍事政権の根強い国であった。かつて繁栄したオスマン帝国の血を引くとはいえ、トルコは国際舞台に登場できるだけの余裕も影響力もなかったからだ。
NATOに加盟できたのも、共産主義のロシアと国境を接し、地政学的に重要な黒海に面した国ということで米国や英国から関心がもたれたことが理由だった。トルコ以外の黒海に面した国々は、旧ソ連の影響下にあったワルシャワ条約機構に加盟している国々だったからである。また、トルコはワルシャワ条約機構加盟国にとって黒海の戦略的な重要性を無効にできるボスボラス海峡とダーダネルス海峡を自国の領土にもっていた。この二つの海峡をトルコが封鎖すれば、黒海の戦略的な重要性は後退するからである。
共産圏に対峙する為に、トルコが持っているこれらの地政学的な特異性からNATOはトルコを加盟国に加える必要性を感じたというわけである。また、トルコにとっても、NATO加盟はヨーロッパ圏に加わることのできる良い機会だと判断していた。
しかし、現在のトルコはシリア紛争においてNATOの意向に反した行動を取っている。
ミサイルシステムもNATOの敵であるロシアのS-400の購入を決めている。更に、S-500をロシアと共同でトルコで生産することを提案もしている。
NATOの防衛システムと互換性の無いS-400そのものの配備はNATOにとって二次問題とされている。NATOが一番懸念しているのは、その配備の為にロシアがトルコで構築するレーダー網が問題になると見ているのである。(参照:「
HispanTV」、「
HispanTV」)
米国はトルコのS-400の購入に対して、報復として第5世代戦闘機F-35のトルコへの引き渡しを中断することを5月の議会で決めている。100機の購入が予定され、2022年までに30機の納品が計画されているたが、現在まで引き渡されたのは僅か1機だけである。米国は今後はその引き渡しを一切中断するという姿勢なのである。
米国のこの姿勢に対して、トルコはF-35を納品しないのであれば、ロシアのそれに対抗できるSu-57を購入することをNATO本部に仄めかしている。(参照:「
GalaxiaMilitar」)
トルコがNATOに対し更に不満として抱いているのは、2015年にロシア戦闘機を撃墜した時に、同じNATOの加盟国がトルコに味方することを積極的に示さなかったことだ。更に、翌年のクーデター未遂にはエルドアンの政治姿勢に不満をもっていた米国が関与しているように思われたが、当時のオバマ政権は曖昧な姿勢を保ったばかりであった。この二つの出来事からエルドアンはNATOそして米国に強い不審の念を戴くようになっていたのである。そして、逆にクーデター未遂を事前に知らせてくれたロシアと良好な関係を築くようになっていくのである。