「国会が終わったからって知らんぷりさせない」 上西充子法政大教授が語る、「国会可視化」の意味

みんなが「できること」を持ち寄れば力になる

――国会パブリックビューイングのシンポジウムでは前回話を伺った犬飼淳さんも登壇されてますね。 上西:犬飼さんとか本業を持っている方がそれぞれのスキルを活かして、「国会の視覚化」に取り組んでくれていることは本当に嬉しいですね。彼らは若いだけでなく、さまざまなスキルを用いた表現力がある。そこがすごいなと思っていて。だから、私が言葉だけで書いたものも、視覚化してくれてよりわかりやすくなる。 例えば、柚木道義議員の会議録の件とか(※2018年5月23日に、質問に立った国民民主党・柚木道義委員は安倍総理に対し、「この質疑の後で過労死家族の会の方々に10分でもいいから面会してもらえないか」と強く要望したが、安倍首相は無視し、代わりに答弁した加藤大臣も、強く抗議する柚木議員の声を無視して何事もないかのように答弁。後日発表された衆議院会議録には、柚木委員の抗議の声が全く記載されておらず、あたかも加藤大臣が何事もなく答弁したかのようになっていた)を、文字起こしした双方を比較して、パッと見ただけでわかりやすく視覚化してくれている(参照:「【正式な議事録と正確な議事録】2018年5月23日衆議院厚労委員会」) 私が問題視した加藤大臣の「こそあど論法」(※これ・その等の指示代名詞の曖昧さを利用して意図的に聞き手をミスリードする)というのも、犬飼さんが視覚化してくれたおかげで、よりわかりやすくなっている。(参照:「【こそあど論法】加藤厚労大臣 2018年1月31日参議院予算委員会」) そういう図式化とか、あるいは横川さんの映像とか、専門スキルを持ってる人が、こういう活動に噛んできてくれるというのは強みです。そしてTwitterを通じて、他にもいろんな方が「自分でできること」を模索し始めてくれている。 例えばTwitterのフォロワーの@tokitaroさんは、私が「サマータイム制で生活がどう変化するか、新聞はちゃんとインフォグラフィクスでやってくれ」って書いたら、「僕がやってみようかな」と書いてくれたんです。 これを見れば、サマータイムが導入されて2時間ズレたら、働く人・保育園児を抱えた家庭の人・小学生を抱えた家庭の人のそれぞれの生活サイクルがどう変わるか、賛成も反対もなく、ただただ視覚化して頭に入ってきますよね。 こういう普通に働いている人を仲間に付けていけるって、すごく大事ですね。 こうやって、「国会は終わったけど、知らんぷりさせないぞ」って姿勢をみんなで、それぞれができることをしながら示し続けていければいいなと思っています。この本の脚注・解説を、急な依頼でも書いて、「#書店平積み計画」(※『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の書店予約を通して書店側にニーズを伝え、店頭での平積みを実現してもらい、より多くの人に本書を認知してもらうための活動)などをツイートしているのも、その気持ちからのことですね。 ――安倍政権はいよいよ国民生活に大きく関わってくる改憲に手を付けようとしています。その意味では誰もが傍観者でいられないし、また、誰もが傍観者ではなく、何かしらの手段で異議を唱えることができるんだという認識が広まってほしいですね。 上西充子●法政大学キャリアデザイン学部教員。共著に『就職活動から一人前の組織人まで』(同友館)、『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&Aなど』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている <取材・文/HBO取材班>
Twitter ID:@mu0283 うえにしみつこ●法政大学キャリアデザイン学部教授。共著に『大学生のためのアルバイト・就活トラブルQ&A』(旬報社)など。働き方改革関連法案について活発な発言を行い、「国会パブリックビューイング」代表として、国会審議を可視化する活動を行っている。また、『日本を壊した安倍政権』に共著者として参加、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 「安倍政権が不信任に足る7つの理由」』の解説、脚注を執筆している(ともに扶桑社)。単著『呪いの言葉の解きかた』(晶文社)、『国会をみよう 国会パブリックビューイングの試み』(集英社クリエイティブ)ともに好評発売中。本サイト連載をまとめた新書『政治と報道 報道不信の根源』(扶桑社新書)も好評発売中
1
2
3
緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」

不信任案決議の趣旨説明演説をおこなったのが、衆院で野党第一党を占める立憲民主党の代表・枝野幸男議員である。この演説は、その正確さ、その鋭さ、そして格調の高さ、どれをとっても近年の憲政史にのこる名演説といってよいものだ。

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会