「優れた演説が埋もれるのはもったいない」。本より早く枝野演説をWebにアップした人物が語る「国会文字起こし」の意味

犬飼淳

犬飼氏のnote

 7月20日、実質的な最終日を迎えていた第196回国会で野党が共同して提出した内閣不信任案。この不信任決議案の趣旨弁明として行われた枝野幸男立憲民主党代表の2時間40分を超える演説はSNSで大きな話題となり、出版化を望む声も多数出るという異例の事態となった。
 その声を受けて、当サイトでは緊急出版を決め、『緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説 安倍政権が不信任に足る7つの理由』としてブックレットを8月10日前後に発売することになった。

8月10日前後に発売される

 リアルタイムで演説を聞き終えたあと、即座に企画を提案し、GOが出たのだが、問題なのは演説が2時間43分という長丁場のものだったことだ。
 当サイトでは過去にも党首討論の文字起こしなどさまざまな文字起こしをやってきたが、それらはせいぜい20分程度。3時間近い分量となると通常記事の配信業務と並行しながらやる身にとってはかなり時間がかかる作業だった。

 土日にかけて文字起こし作業を単身行っていたが、なんとネット上にこちらよりも早く文字起こしをアップした人物がいた。(参照:【文字起こし】2時間43分即興演説 立憲・枝野代表「安倍内閣不信任決議案」(2018年7月20日)

 それが、枝野演説の中でも登場する「信号無視話法」(※聞かれていないことを話し続け、議論相手や聴衆に迷惑をかけ、時間を浪費させる答弁のこと。詳細は近日公開予定の記事にて)の名付け親である、一会社員である犬飼淳氏だ。

 今回は、編集部より早く文字起こしを完成させた犬飼氏を迎え、今国会でさまざまな文字起こしをした「同志」としてお話を伺ってみた。

枝野演説は週末16時間かけて終えた

――犬飼さんが文字起こしを始められたというのは土曜日の時点で知ったのですが、22日の時点で文字起こしを終わらせてしまうとは驚きでした。

犬飼:幸い、土日をフルに活用して作業できたのが良かったです。最終的に全部で16時間くらいはかかっているでしょうか。

――私は国会での発言を文字起こしをする際に、YouTubeにアップされた動画などから自動文字起こし機能を使ってテキスト抽出して、聞きながら修正していくというスタイルを取ることが多いんですが、犬飼さんはどのようになさってるんですか?

犬飼:私の場合は本当にアナログで、10秒くらい再生したのを書き起こして、という作業を延々と続けています。ただ、タイピングは普通の人より速いかもしれません。
 最初に文字起こしを始めたのが5月24日に有楽町で行われた野党の合同街宣がきっかけだったと思います。(参照:【文字起こし】野党合同緊急街宣「いい加減にしろ0524」 2018年5月24日
 辻元清美さんとか福山哲郎さんがいらっしゃってた街宣です。あのときに、知人が「行きたいんだけど行けないから、ちょっと様子を教えてほしい」と頼まれたんですね。それで動画を撮ってあげたりしたんですが、それだけじゃ足りないからちょっと文字起こしをしてみようかなと思ったのがきっかけでした。そのときに、演説の文字起こしというのが需要があるんだと気が付きました。

――信号無視話法を思いついた一週間前くらいですね。

犬飼:はい。合同街宣の書き起こしの次にしたのは25日に野党が提出した加藤勝信厚生労働大臣の不信任決議案の趣旨弁明として立憲民主党・西村智奈美議員が行った演説です。(参照:【文字起こし】2時間6分マラソン演説 立憲・西村議員「厚生労働大臣不信任決議案」趣旨弁明 (2018年5月25日)
 それも2時間6分というかなり長丁場の演説で、聞いてみたら内容も良かったんです。ただ、立憲民主党のサイトなどを見ても特に原稿をアップしたりもしないので、もったいないなと思って、これを文字起こししようかなと思ったんです。これが「文字起こし」をコンテンツとして確立したきっかけとしては大きかったですね。
 このとき、「ああ、これくらいの長時間の演説は、自分はこれくらいの時間で文字起こしできるんだ」と、目安になったんですね。

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優れた演説なのに公開もされない
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緊急出版! 枝野幸男、魂の3時間大演説「安倍政権が不信任に足る7つの理由」

不信任案決議の趣旨説明演説をおこなったのが、衆院で野党第一党を占める立憲民主党の代表・枝野幸男議員である。この演説は、その正確さ、その鋭さ、そして格調の高さ、どれをとっても近年の憲政史にのこる名演説といってよいものだ。

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