オウム教祖らの死刑執行では、「すべて終わった」ことにはできない
2018.08.10
記録的猛暑に集中豪雨と天災続きだが、円安ドル高で日経平均が一時上向くも下落するなど、なかなか先行きが見えないこの頃。とはいえ、2年後の東京五輪に向けてラストスパートの狼煙が上がった兆しもある中、気になる話題をピックアップ!
7月6日、元オウム真理教教祖・麻原彰晃ほか教団幹部計7人の死刑が執行された。続く26日、残り6人の死刑も執行され’88年から’95年にかけて同教団が引き起こした事件は実に30年の時を経て清算されたこととなる。
しかし一方で、’00年に設立された「アレフ」含む後継団体の信者数は全盛期の1万1400人(国内)から約10分の1に減ったものの、今だ新規加入者や麻原に帰依する者も少なくない。また、約38億円にも上る事件被害者への賠償が滞りながらも、教団の保有資産は「ひかりの輪」、「山田らの集団」ら他の後継団体と合わせてなぜか年々、億単位で増加している。
宗教問題に詳しいジャーナリストの藤倉善郎氏は、そうした点を差し引いても、事件の総括がなされたとは言えないと話す。
「一連の事件は裁判記録などで既に全容が明らかになっているにもかかわらず、政府の陰謀であるとか、事件の真相が不明のままだといった論調を支持する動きがあります。こうした“歴史修正”の流れを阻止することが課題です」
一般的には白眼視されるような存在に対し、理解者を気取るサブカル的な動きはいつの世もある。’90年代、麻原も各種メディアで宗教人として持て囃されていた。
坂本弁護士が教団批判をした番組映像も、放送元のTBSがオウムの抗議を受けてお蔵入りにしている。その9日後、坂本氏はオウムに殺害された。
「今、一部親族や元信者が文化人のように祭り上げられているのも、かつてを彷彿とさせます。彼らの個人史への興味と、起きた事実は区別しなければなりません」
こうした流れがすぐさま、オウム復活に繫がるとは言えないが、後継団体の内部状況次第では風向きが変わる可能性も否めない。
「後継団体と無関係だと主張している親族について、少なくとも平成25年まで、アレフの運営にいわばロイヤルファミリーのように関与していた形跡が裁判で明らかにされています。オウムの元広報で『ひかりの輪』の上祐史浩代表がそうであるように、メディア露出で獲得した知名度や“人気”が、組織基盤づくりに作用すると危惧する公安関係者もいるようです」
オウム教祖らの死刑執行で社会不安は収束したのか
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