オウム教祖らの死刑執行では、「すべて終わった」ことにはできない

“内なるオウム”は誰にでも存在する。防ぐ手立ては?

 オウムを増長させた責任の一端が社会にもあったことは前出のとおりだ。だがオウムが異質であるあまり、反面教師として内面化するのが困難であったことは、現状が物語っていると藤倉氏は話す。 「今、オウムに似た構図が見られるのが政治運動でしょう。極右ヘイトスピーチ集団や『反安倍』の一部が過激化しているのを見ているとそう思います」  そして日本脱カルト協会も主張するように、オウムの宗教的、カルト的構造については未解明な部分が多い。麻原の高弟全員の死刑執行がなされれば、それを紐解くための史料は失われることになる。その場合、“次なるオウム”の誕生はどう警戒されるべきなのか。 「集団化の過程で独善性を強めていくのは人間の本性的側面でもあるからこそ、歴史に学ぶ以外にない。地下鉄サリン事件の直前、ある有識者がオウム本拠地に招待され、ハリボテの神像を前にして雑誌で教団を擁護して見せたことがあります。その裏にサリン精製施設があるとも知らず。オウムを理解するのは難しくても、疑惑のある団体をうかつに擁護する危険性は比較的わかりやすい教訓です」
藤倉善郎氏

藤倉善郎氏

【藤倉善郎氏】 「やや日刊カルト新聞」を創刊。新興宗教や自己啓発セミナーなどのカルトを精力的に取材する。著書に「『カルト宗教』取材したらこうだった」(宝島社)
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