豪雨災害対応よりカジノ法案を優先した安倍政権は本当に「危機管理」に優れているのか?

石井啓一国土交通大臣。参議院インターネット審議中継より

 100名以上が亡くなる大きな被害となった西日本の豪雨災害は、こうしている今も懸命な行方不明者の捜索が続けられており、一命は取り留めたものの家財のすべてを失った人たちがたくさんいます。  被災地の水が引いても、別の場所では危険な速度で川の水が流れていたりして、二次災害の危険性も指摘されています。平成に入って最大規模の被害となったため、政府は一刻も早く被害の全容を把握し、どのような対策を講じなければならないのかを考えなければなりません。  酒盛りをしたあげくに非常災害対策本部の設置が遅れ、京都府の国会議員たちは豪雨の中でビアパーティーを繰り広げていましたが、もう終わってしまったことなので、それらに目を瞑ってあげたとして、今、国会議員がやるべきことは言うまでもなく、復旧と復興に全力を尽くすことであるはずです。  ところが、7月10日の国会で審議されたのは、被災地の話ではなく、「カジノ」の話でした。自民党と公明党は「被災地」の話をそっちのけで、「被災地のことを話し合うべきだ」という野党の反対を押し切り、「カジノ」の話し合いを強行したのです。信じられません。なぜ自民党と公明党は、国民の命がかかっている被災地の話よりも「カジノ」を優先するのでしょうか。週刊文春の報道のようにカジノ業者がパーティー券を購入してくれていたからでしょうか?(参照:「カジノ業者が国会議員のパーティー券を購入していた」週刊文春オンライン

被災地よりカジノの話を優先する石井啓一国土交通大臣

 昨日、野党の反対を押し切り、カジノ法案を話し合うために国会議事堂で朝から晩まで会議に出席していた石井啓一国土交通大臣。まだまだ川やダムが危険な状態であることに変わりはなく、国土交通大臣の仕事はたくさん残っているはずなのに、この日は災害の対応をせず、カジノを話し合うためにノコノコと国会に現れました。小学生が学ぶような話になりますが、国土交通大臣とは、一体、どのような仕事なのでしょうか。道路を作るだけが仕事ではありません。鉄道、バス、船、飛行機の管理はもちろん、川や港の整備、土地や不動産の管理、さらには街づくりを計画し、国土を守ることがお仕事です。川やダムがどれくらい溢れそうなのかを調べるのも国土交通省の管轄ですし、気象庁は国土交通省の外局です。つまり、今回の災害に最も密接に関係する大臣が「国土交通大臣」ということになります。  自民党は公明党とタッグを組んでいますが、自民党の議員ばかりが大臣を務めるのでは困るということで、2004年の小泉政権の頃から公明党が担うようになり、第2次安倍内閣になってからは代々、公明党の議員が国土交通大臣を担っています。石井啓一議員(衆・比例北関東ブロック)は東京大学を卒業後、建設省に入省し、やがて公明党から衆議院議員に立候補し、当選回数は9回を誇るベテランです。言ってしまえば、公明党のエリート中のエリートである石井啓一国土交通大臣が、被災地よりも「カジノ」を優先している現実。この国の大臣は、人の心が分からないポンコツだらけなのでしょうか。この日、野党の議員に「なぜ被災地よりカジノを優先するのか」と追及された石井啓一さんは、こう答えました。 「私は、カジノではなく、IRの所管であります」  IRとは、「カジノを含む統合型リゾート」のことです。カジノのないリゾートはIRではないので、カジノを中心としたものであり、「カジノ法案」と言うと感じが悪いので、わざわざ「IR」というピンと来ないネーミングにしているのです。  そして質問の核心にはまったく答えず、東大卒のエリートが「カジノではなくIRだ」という屁理屈を述べ、「私は国会に呼ばれたから来ただけだ」と豪語したのです。「オマエの気持ちはないのかよ!」と思わずにはいられません。あの場にいた野党の議員は「カジノより被災地だ」と呼びかけているので、石井啓一国土交通大臣が「話し合うために来たものの、私もそれどころじゃないと思っている」と言えば、「だったら散会で!」となって終わったかもしれません。わざわざ朝から晩まで国会に張り付いてカジノについて話し合う必要はありません。  この日、広島県府中町を流れる榎川が氾濫しましたが、野党に川が氾濫している話を知っているのかと問われたた石井啓一国土交通大臣は「昼間のニュースで知った」と話しました。つまり、我が国の国土交通大臣はカジノを話し合うために国会に来ているせいで、ずっとテレビをつけて心配している庶民より「情弱」になっているのです。トップが不在でも、実行するのは国土交通省の職員なので、最終的にトップの判断が必要ないものは動くかもしれませんが、トップがハンコを押さなければ進まないものは滞ることになります。スピードを止めてしまうことに何ら責任を感じていないということは、彼らに国を治める資格はないのではないでしょうか。
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被災地よりカジノを優先して質疑をした議員たち
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