小学3年生の思いつきから作られた法律!? コスタリカ民主主義の懐の深さ

足立力也

子どもたちの思いつきをサポートする大人たち

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法案制定をラジオで訴える子どもたち(2011年)

 コルテスさんは早速サラスさんにそのアイデアを話し、理科のジャネット・イバーラ先生がいる学校の事務所に赴いた。イバーラ先生はその提案を聞いて、どうすればそのアイデアを実現できるか一緒に考えた。

 マナティの生態を教えてくれたのは、国立ナシオナル大学の生物学者アレクサンデル・ゴメス氏だ。2011年初頭、地元リモン州選出のロドリゴ・ピント国会議員(当時・国民解放党)がこれを正式に法案として国会へ提出した。

 それから3年の間に議論が続けられた。2013年10月に科学技術特別常設委員会にかけられ、2014年7月、ついに本会議で採決の時を迎える。57人の定数のうち46人が賛成して、マナティを国のシンボルとする法律が正式に制定されたのだ。

 採決の日には、たくさんの子どもたちが国会の傍聴席を埋めた。議決されるや否や、マナティのぬいぐるみを持った子どもたちと国会議員たちが、傍聴席と議場を隔てる大きなガラス窓を挟んで互いの手を合わせるように祝福しあった。

 報道でも、あくまで子どもたちが提案したという文脈で伝えている。たとえば国内最大紙の『ラ・ナシオン』は、法案提出時からこのケースを報道してきた。法案制定の瞬間の写真は、子どもたちと国会議員たちが喜び合うシーンを、子どもたちの前(議場側)から撮影し、大きく掲載している。直後の2014年8月3日には再びこの2人に焦点を当て、「子どもたちがマナティを国のシンボルと宣言するよう促した」という特集も配信している。

 このように、子どもたちの思いつきを、学校の先生、専門家、政治家、ジャーナリストといった大人たちが取り囲むようにサポートして、1つの法律ができ上がったのだ。国会職員のルイス氏が、コスタリカの「象徴的な事例」として取り上げるのもうなずける。

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「子どもたちの希望と熱意に基づいた」法律

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