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仕事の効率化や、ヒューマンスキルの底上げを図る際、度々能力の基準として注目されるのが「
EQ」だ。
EQとは、「
Emotional Intelligence Quotient」の略で、日本では「
心の知能指数」と訳される。「頭の知能指数」として知られている「
IQ」に比する概念で、とりわけビジネスシーンにおいて「
自身と他者の感情を認知・理解・コントロールする能力」として用いられる。
実力主義社会である
アメリカでは、かつては「IQが高い人=ビジネスでも成功する」と考えられてきたが、同国イエール大学のピーター・サロベイ博士と、ニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士による調査の結果、ビジネスの成功要因はIQの高さではなく、
対人能力にあることが判明。1990年、両氏によって論文が発表されると、EQ理論は同国の企業経営幹部の間で、急速に広まっていった。
日本でも近年、IQに変わる能力診断テストとして、社員研修にEQ診断テストを導入する企業が増えてきている。
アメリカでベストセラーとなった「Emotional Intelligence 2.0」の著者で、EQに特化したコンサルタント企業TalentSmartの創業者でもあるトラヴィス・ブラッドベリー氏は、「EQが高い人の共通点」として下記の18項目を挙げている。
1.感情の語彙力を持っている
2.人に興味がある
3.変化を受け入れられる
4.長所と短所を自覚している
5.他人の性格を見きわめられる
6.攻撃されにくい
7.自分自身にも他人にも「No」が言える
8.失敗してもやり過ごせる
9.見返りを求めない
10.恨みを抱かない
11.他人の毒抜きができる
12.完璧を目指さない
13.状況に感謝する
14.繋がりを絶つ勇気がある
15.カフェインを取りすぎない
16.よく眠る
17.ネガティブな考え方からはずれる
18.自分の喜びを人に制限させない
人間が他人と接する以上、たとえそこが職場であっても、仕事と感情を完全に切り離すことは不可能に近い。とりわけ、疑問詞がつく「怒り」や「不安」といったネガティブな感情においては、「後に引きずりやすい」と、多くの人が経験しているところだろう。
こうした自分自身や周囲の感情を上手くコントロールでき、職場のコミュニケーションを円滑することができれば、仕事の生産性もおのずと上がってくる。それゆえ、チーム全体を動かすリーダーにはもちろん、相手あっての感情であることを考えると、働く現場では、社員1人ひとりに高いEQが求められるのだ。
今回、EQに詳しい人材教育機関や、社内研修にEQ診断テストを取り入れている企業などにヒアリングを行ったところ、この時代だからこそEQを高めるべきだとする3つの大きな社会的ファクターが見えてきた。
今回はそのうちの1つである「不活性なコミュニケーションの弊害」について紹介しよう。