セネガル戦でまたも「旭日旗」。日本代表を応援するのに旭日旗を出すべきではないこれだけの理由
旭日旗の何が悪いんだ、というようなことを思う人もサッカーファンの中にはたくさんいる。だが川崎フロンターレの処分を知って、大方の日本代表のサポーターも、禁止されてしまったからには仕方ないということをまた理解している。しかしワールドカップとなると、このようなJリーグで起きた事件とその処分の内容について知るものは、むしろ少ないことになる。きっと、セネガル戦で出していたサポーターもそうなのだろう。しかし、これが続くと危険である。
このワールドカップで、「国家の起源に関する」政治的なシンボルを出した選手がすでに処分されている。スイスの選手が、アルバニアの国旗を表すジェスチャーをゴールパフォーマンスでしたとのことである。この時の対戦相手は、セルビアであり、スイスの選手はアルバニア出身。アルバニアの国旗のジェスチャーをセルビア戦でやるというのは、極めて政治的な行為であり、挑発とみなされたのだ。アルバニアとセルビアは歴史問題をめぐって犬猿の仲なのだ。2014年にはこの両国の試合で、やはり同じアルバニアのエンブレムをめぐってサポーターが暴動を起こす事件があり、試合は没収試合となった。今回のスイス代表の選手は罰金処分。さらに同じ試合でセルビアが差別的なメッセージを出したとして、セルビア協会、セルビア代表の監督らに罰金処分が科されてもいる。
旭日旗がこれからの試合でどのようなインパクトを持つかは定かではないし、それが大きな問題になるかは予測できない。すべてはFIFAの判断だ。しかし、すでに明確に禁止されている旭日旗を、そのようなリスクがありながら日本代表の試合で出す必要はあるのか。それが、せっかくの試合に水を差すようなことになるのではないか。その可能性を考えれば、私たちはどうしたらいいか、答えは難しくないだろう。
<文/清義明>
せいよしあき●フリーライター。「サッカー批評」「フットボール批評」などに寄稿し、近年は社会問題などについての論評が多い。近著『
サッカーと愛国』(イーストプレス)でミズノスポーツライター賞、サッカー本大賞をそれぞれ受賞。