神輿が空を飛び、海を往く! 築地の夏の風物詩「獅子祭り」、来年からはどうなる?

祭りは維持できる?市場が消える築地、「来年以降どうすれば…」

 こうした光景を特別な思いで見つめていたのは、豊洲への市場移転を控えた市場関係者だ。  祭りに参加した70代の男性は「市場が移転するとこれほど盛大な祭りは出来ないだろうねえ」と感慨深げ。もちろん祭り自体は来年以降も開催されるものの、獅子祭りの参加者の多くは築地市場の関係者であり、また永年に亘って市場内が祭りのメイン舞台となっていただけに、来年以降どのように開催していくのかは分からないという。

築地市場内を行く山車と神輿。写真の山車を曳く「多々幸会」は市場隣接地にある築地四丁目のお囃子の会。こうした祭り参加者の多くは市場関係者だという

 市場の移転先である豊洲は新しく造成された埋め立て地であり、豊洲市場の徒歩圏には神社すら無い。豊洲エリアの氏神は門前仲町の富岡八幡宮になるというが、豊洲市場からは相当の距離があり、まだ築地の波除稲荷神社のほうが近いくらいだ。富岡八幡宮の大祭である深川祭りは江戸三大祭に数えられるほど盛大な夏祭りであるものの、豊洲市場の近隣まで神輿が来ることはなく、祭りが「東京の魚市場の風物詩」となるのは今年が最後となるかも知れない。

食材に感謝する「祈りの場」、豊洲ではどうなる?

 築地市場の閉場、そして豊洲市場の開場まで僅か4か月。新しい清潔な市場が出来ることへの期待も大きい反面、移転直前となっても問題が山積していることは周知のとおりで、それを象徴するのが市場の隣接地にある広大な空き地だ。  この場所には複合観光施設「千客万来施設」が建設される予定であるが、東京都は5月31日に千客万来施設の建設凍結を発表。今後は2020年以降の着工を目指すとしている。千客万来施設を運営する予定である万葉倶楽部によると、同施設のコンセプトは「豊洲江戸前市場」で、近代的な豊洲市場とは異なり「日本らしさ」や「魚河岸文化」を感じ取って貰える内容となる予定であった。

豊洲市場千客万来施設の館内イメージ(東京都中央卸売市場プレスリリースより)

 小池知事は千客万来施設予定地を空地のままとせず、当面なんらかの形で活用したいとしているが、その「仮活用」も開場までには間に合いそうではなく、不完全なかたちでの開場となってしまうことが確実なものとなってしまった。

豊洲市場とその隣接地に広がる千客万来施設の用地

 さて、新市場が開場する豊洲が埋め立て地であることは周知の事実であるが、実は「築地」も読んで字のごとく「新しく作った土地」を意味する地名であり、豊洲と同様に埋め立て地である。築地は江戸時代初期の1657年に起きた明暦の大火(振袖火事)後に造成された土地で、火災で焼け出された多くの人が移住、築地本願寺もこの時に浅草から移転してきたものだ。やがて、隅田川、江戸湾に近いこの地には多くの漁業関係者も住むようになり、新たな文化が築かれることとなった。
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魚河岸文化を引き継ぐべき
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