足立康史衆院議員による是枝裕和監督『万引き家族』と科研費バッシングへの対応の圧倒的な正しさ

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意外?にも是枝監督バッシングと科研費問題については非常にまともな意見を語っている足立康史議員のTwitterより

 過日のカンヌ映画祭においてパルムドールを受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』は、ひと口に言えば、「家族のようなもの」が崩壊してゆくさまを淡々と、しかし丁寧に描くことで、逆説的に「家族」なるものの不気味さと美しさを浮き彫りにする、紛れもなく高品質の映画だ。ひとつひとつのシーン、科白がじつによく練られていて、どこを切り取っても観客の心を揺さぶらずにはおかない。

 ところで、「立民は北朝鮮の工作員」とのヘタな川柳を披露して多くの国民を唖然とさせた日本維新の会所属の足立康史衆議院議員が、この『万引き家族』について6月14日に以下のようなツイートをしているのを、どれほどの方がご存知だろうか。




“昨夜『万引き家族』を観ました。素晴らしかった。
科研費は学術振興のため、助成金は映画文化振興のため。国益という枠に押し込める必要は全くありません。”

“くどい、って言われそうですが、本当に素晴らしかった。政治に転じてから観た映画では一番かな。
こんな映画を生み出せる日本を誇りに思いますね。”

 どちらのツイートも本稿執筆時点(6/16)で前者は47RT、後者に至ってはわずか13RTだ。なおこの中には筆者自身のRTも含まれている。

『万引き家族』は文化庁の助成を受けて製作されているが、是枝監督の「公権力(それが保守でもリベラルでも)とは潔く距離を保つというのが正しい振る舞いなのではないか」と林芳正文部科学大臣からの祝意辞退を表明したブログがどういうわけか政権批判と受け止められ、「お上がスポンサーなのに、お上に媚びへつらわないとは何事か」という、極めてさもしい根性に基づくバッシングを行う輩がネット上で跳梁跋扈することになった(参照:Togetter【万引き家族】是枝「公権力とは潔く距離を保つ」→「『万引き家族』は文化庁の助成金を頂いております」)。

 足立議員のツイートはそうしたバッシングへの応答として書かれたものだが、案の定、同議員に対しては「見損ないました」などと批判的なリプライが多数寄せられており、その数はRT数を遙かに上回る。

科研費騒動とは何か?

 私たちはつい最近、これとよく似た光景を眼にしている。

 産経新聞が火種を起こし、自民党所属の杉田水脈衆院議員が、2月26日の国会質疑を皮切りとしてSNS・ネット動画等を通じて焚き付け、延焼させた科研費(科学研究費助成事業)をめぐる一連の騒動である。(参照:政権に批判的な学者への科研費バッシングと弁護士への懲戒請求濫発の背後に共通するもの

 科研費とは文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会が行っている研究費の助成事業のことで、大学等に所属する研究者が詳細な研究計画書を提出し、複数段階の審査を経て初めて獲得できる競争的資金である。とくに近年では大学の基盤的経費が大きく削減され研究環境が悪化してゆく中、その削減分を補填すべく多くの研究者が応募している。

 今般の騒動とは要するに、杉田議員の扇動のもと、法政大学の山口二郎教授(政治学)や大阪大学の牟田和恵教授(フェミニズム)、龍谷大学の松島泰勝教授(経済学)などといった現政権に批判的であったり、政府見解と異なる立場から研究をしているとされる学者に対し、税金を原資とするその科研費が渡るのはけしからんという、およそ先進国とは思えない稚拙な発想に基づくバッシングのことである。

 これには当然のごとくさまざまな立場や分野の研究者から反論が出された。しかし扇動によって熱に浮かされた、そもそも科研費を研究者が好き勝手に使えるお小遣いか何かだと根本的な勘違いしているこうした連中の多くは一切聞く耳を持たず、「反論するとは何か都合が悪いに違いない」などと彼ら以外には理解不能なロジックを用いて一層吹き上がっていった、というのが5月中旬頃までの展開である。

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科研費批判は政府見解とも異なる

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