また、薬局の立地にも問題があります。基本的に薬局は病院の近くにあるのが当たり前です。
1つの病院に薬局が1件セットで開業する形態は、業界ではマンツーマン薬局と呼ばれていて一般的な業態です。(病院と薬局って結構セットで営業してますよね)
この薬局の比率が結構高いのですが、先述した通り、基本的に薬局の経営は店先にある医院にかなり影響されます。
医院は院内処方と院外処方を選択することができるため、軒先で処方箋無しで薬局が勝手に薬を売りはじめたら、怒って処方箋を発行せず院内処方にしてしまうかもしれない……そうすると収益の柱だった処方箋応需が揺らいでしまいますので、なかなか薬局の経営者は「零売」には手を出せないということになるわけです。
加えて、厚生労働省が安全の為医師による診断の上で医療用医薬品を使用する事を推奨しているので、保健所の心象もあまりよろしくありません。
自分も開業直後は至らない点が多かったので、保健所の方々には大変なご迷惑とご心配をおかけしました。
やはりご指導頂く項目が多くて、守らなければならない事も多いので、そこまでして販売しても利益が小さいのは割に合わない……そう経営者の方も考えてるのかもしれません。
しかし社会保障が増加し続ている昨今、医療費のウエイトはかなり大きくなっており、これを少なくするのは社会的に必要な事だと考えています。
病院に行って検査して処方箋を出してもらい、薬局で調剤する。という過程は安全ですが、非常にコストが掛かります。
例えば何度も使ってるような常備薬やあまり危険性が無いビタミン剤などは、本当は処方箋なしで買っても良いのではないか。
経験のある軽い症状であれば薬局で医療用でも買って良いのではないか。
自分は以前からそう考えていて、その為に今後もこのタイプの薬局が増えていけばよいと考えていますし、その為に活動を続けていくつもりです。
一般人の知らない「クスリ」の事情 第1回
<文/長澤育弘>
ながさわやすひろ●薬学部卒業後、救急指定病院在職中に認定薬剤師を取得。その後、調剤薬局やドラッグストア、在宅専門薬局で管理薬剤師を務める。2016年9月に
「池袋セルフメディケーション薬局」(http://www.self-medication.co.jp/)を開局。「患者様が自分で健康を管理し自分で治療する」という促進を主な目的に掲げている。