日大反則タックル問題:米ハイスクール時代に、NFL選手も輩出した名伯楽の元でプレイした人物はこう見た

メディアは「アメリカン・フットボール」への理解も

 松下氏は、今回の事件は問題だが、アメフトに詳しくないメディアなどの取り上げ方にも一抹の不安を抱いているという。 「20世紀初頭アメリカでは死者・重傷者多数を出す競技だったそうです。それを日露戦争直後の頃セオドア・ルーズベルト大統領がルール改正を先導しました。ルール改定の背景に死者・重傷者がいることを考えると、今回のような逸脱した行動を起こしてはならないと考えています。 しかしながら、アメフトにおける『反則』は、他スポーツと異なることもあります。アメリカンフットボールはテクニカルファウルと呼ばれる反則含め、試合ではほぼ必ず反則が出ます。野球で反則ゼロの試合は珍しくありませんが、アメリカンフットボールの場合成功の反対が不成功やアウトではなく、「反則」であることが多いのです。 例えばボールを蹴るパント、ディフェンス選手がパンター(ドロップキックをする選手)のボールを叩き落とせば形勢逆転のファインプレイですが、パンターに触れると15ヤード後退と相手の攻撃権再開の罰則です。ディフェンス選手がボール持った選手のジャージを掴んで得点を阻止するのはファインプレイですが、タイミング違いで指が相手のフェイスマスク(顔を覆うケージ)に引っかかればやはり15ヤード後退の罰則になります。このように反則が成功の表裏一体になる会話が日常にあります。自チームの反則に対してコーチや監督が寛大なのはそのためです。 また、ディフェンスラインマンはアメリカンフットボールの中でもルール制約が最も緩く、オフェンスが相手を掴んでならないのに対し彼らは掴むことができ、好き放題暴れても適用される反則が少ないのです。ですから目標を見失うと今回のような事故になりえると言えます。 スポーツ庁や様々な機関が今回の件について調査介入する場合、このような背景を前提に考えてほしいと思います」 【松下タイケイ】 近年、とみに話題になっているトレーニング器具、ケトルベルの日本人初の認定インストラクター。アメリカ在住時にハイスクールでアメフトチームに所属。著書に『身体を芯から鍛える! ケトルベル マニュアル』(日貿出版社)
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