これまでにもトランプ大統領の発言一つで急落するなど、ペソの動向は隣接するアメリカの影響をどの国よりも強く受ける 写真/AFP=時事
一方、ファンダメンタルズの観点から新興国通貨を推す向きもある。現役トレーダーで元ヘッジファンドマネジャーの志摩力男氏は特にメキシコペソに注目する。
「ペソは3通貨の中では最も上昇期待が大きく、スワップポイントに加えて、為替差益のダブル獲りができる可能性も高い」
志摩氏によると、通貨の上昇余地は金利とインフレ率の関係から推し量ることができるという。金利がインフレ率を上回っているほどその国の通貨の上昇余地は大きく、逆にインフレ率のほうが高いと下落しやすいとのことだ。
「メキシコの政策金利は7.5%とインフレ率の4%台を大きく上回っており、好調なアメリカ経済と関連が深いことも好材料。独立性が高い中央銀行は先進国レベルだし、アメリカの投資家が多く参加して流動性が高く、3通貨の中では最も値動きが安定しています」
ただメキシコには利下げの可能性があり、スワップが減る心配がある。それでも、利上げ中のアメリカとの金利差が狭くなると資金が大量流出する恐れがあるので、大幅な利下げは考えにくいという。
これに対し、トルコはインフレ率が10%と金利を大きく上回っているため下落余地が大きいと志摩氏は警戒するが、「年内に複数回の利上げが予想されるので、そこが下げ止まりの買い場になりそう。利上げすればスワップ金利はさらに魅力的になる」と話す。南アフリカランドも、経済停滞の戦犯とされたズマ前大統領が辞任したことは好材料。今後、さらに資源が高騰すれば、ランドへの追い風となる可能性が高いとのことだ。