メキシコでトランプに「物申す」大統領誕生の可能性高まる。彼の名は「アムロ」

左派政党候補者が躍進した理由

 国民の間でも、これまで80年余りの右派系の2大政党による政治にマンネリ感を覚えたり、汚職の絶えることのない政治にうんざりしたりというのがアムロを推す一番の要因になっている。  そしてもう一つ重要な要因がトランプ大統領の存在だ。米国でメキシコからの移民を犯罪人呼ばわりして批判し、メキシコとの国境に壁を設けるとか、北米自由貿易協定(NAFTA)についても保護主義に走ってメキシコに不等な条件を押し付けようとしているトランプ大統領が誕生したことも、アムロへの支持が高まる要因となっているのだ。メキシコの多くの国民が目から見て、これまで米国の属国であるかのような政治を行って来た2大政党に対して国家の再生を誓うアムロへの支持がこの点からも集まっている。  米国がトランプ大統領になってから、アトランティック・カウンシルの「経済成長の為のラテンアメリカ・イニシアティブ」の部長Jason Marczakは「2年前までメキシコで10人中6人は米国を肯定的に見ていたが、現在は10人中6人が米国を否定的に見ている」と述べている。(参照:「Vanguardia」)

メキシコ財界は左派大統領誕生に懸念

 もちろん、メキシコで誰もがアムロを支持しているのではない。特に、企業家の間では彼の勝利を懸念している。企業家が勝利を望んでいるのは支持率2位のアナヤ候補で、3位のメアデ候補が合流して支持率を伸ばすことを望んでいる。  その理由は、彼の発言にある。例えば、アムロはメキシコ湾の海底油田の開発を外国企業の手に委ねることをしないといった発言している。その為、エクソンモービルやシェブロンに発掘許可も与えないといった発言をしている。石油開発に関係した外国企業と予定されている複数の契約は1530億ドル(16兆5300億円)にまでのぼる金額になるとされており、アムロが大統領になった場合にその行方が企業家には気になるところなのである。(参照:「El Financiero」)  アムロ政権誕生を懸念して、メキシコの現政府の官僚はペーニャ・ニエト大統領の12月1日の政権終了前までに外国企業への石油開発の許可を早急に与えるべく入札の開札を早めているという。既に100以上の開発許可を出したそうだ。また、エネルギー業界の間はアムロが提案しているエネルギー分野開発について外国企業に委ねることをせず、半官半民企業のペメックスに設備投資をして開発力を高めるといったプランは実行するために議会の承認が必要で、それを得ることはできないであろうと予測している。(参照:「New York Times」)
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アムロ大統領になったら米墨関係を変えられるか?
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