NASA、新型の火星探査機を打ち上げ! 日本も中国も目指す火星探査のいま

民間も目指す火星

 国による火星探査が勢いを増す一方で、もうひとつの大きなうねりとして、民間企業による火星への挑戦もある。  実業家のイーロン・マスク氏が率いる宇宙企業「スペースX」は2016年、火星に人類を移住させる一大プロジェクトを発表した。2017年にはさらに洗練された計画を発表するとともに、それを実現する巨大ロケットと宇宙船「BFR」の開発がすでに始まっていることが明らかになっている。  マスク氏は早ければ2024年にも火星への有人飛行を始めたいとしている。もちろんそれは楽観的な予測だが、開発が遅れたとしても、2030年前後には、火星へ移民船が飛び立つ光景を目にすることができるかもしれない。  もちろん、それで国による火星探査が意義を失うわけではない。直接お金にはならない科学的な探査は、引き続き国の研究機関が担うことになろう。  むしろ、民間企業の安価なロケットで火星に行きやすくなれば、それだけ観測機器などを手軽に送れるようになり、もしかしたら科学者や研究者が直接現地に赴き、見て触れて探査することもできるかもしれない。  この夏、大接近する火星を眺め、「生きているうちにあそこへ行けるかもしれない」と思いをめぐらせば、実際の距離とともに、心情的な距離も近づき、より身近に感じられることになるかもしれない。

スペースXによる火星移民の想像図 Image Credit: SpaceX

<文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行っている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・News | NASA, ULA Launch Mission to Study How Mars Was Made(https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7114&utm_source=iContact&utm_medium=email&utm_campaign=NASAJPL&utm_content=insight20180505-1) ・Overview | InSight – NASA Mars(https://mars.nasa.gov/insight/mission/overview/) ・MMX – Martian Moons eXploration(http://mmx.isas.jaxa.jp/index.html) ・ESA – Robotic Exploration of Mars: ExoMars Mission (2020)(http://exploration.esa.int/mars/48088-mission-overview/) ・Mars | SpaceX(http://www.spacex.com/mars
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会