なぜ栗山英樹監督の「殺し文句」は、大谷選手を口説き落とせたのか?

山口博
『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』

『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木亨著)

大谷選手を動かした殺し文句

「誰も歩いたことのない道を歩いてほしい」――。

 ロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手の二刀流の大活躍で、北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督が大谷選手に言った「殺し文句」が再び脚光を浴びています。それがこのフレーズで、高校卒業後すぐにメジャーリーグ挑戦を決めていた大谷選手を、ドラフト1位で強行指名、が日本ハム入団を実現させた決め手となったとされています。

 殺し文句を生み出して、繰り出すことができれば、人を動かしやすくなるし、ビジネスで成功しやすくなります。しかし、そう簡単に相手の心に響き、相手を翻意させて、大きな決断をさせるようなフレーズが思いつくわけではないと思っている人がほとんどではないでしょうか。

 しかし実は、殺し文句はあるスキルを用いれば、生み出すことができます。そして、生み出した殺し文句は、ほとんどのケースで相手を動かすパワーを発揮するのです。その方法とは、相手のモチベーションファクター(意欲を高める要素)を見極めて、その要素の琴線に触れるフレーズを生み出すことです。

モチベーションファクターを見極めれば殺し文句は生み出せる 

 モチベーションファクターとは、人それぞれがもつ意欲が高まる要素です。私はモチベーションファクターを次の2つの志向、6つの要素に分類しています。(参照:「やる気の源泉」を見極めてマネジメントすると集団はうまく回る!

《2つの志向と6つの要素、その内容》
●牽引志向
・目標達成(目標に向かって挑戦することにやる気が高まる)
・自律裁量(任されて仕事をすることに意欲が上がる)
・地位権限(地位が高まることにモチベーションが向上する)

●調和志向
・他者協調(周囲と協力することにやる気が高まる)
・安定保障(安心して仕事をすることに意欲が上がる)
・公私調和(バランスをとることにモチベーションが向上する)

 この6つのモチベーションファクターごとに対応するキーワードを挙げると、以下のようになります。

●牽引志向
・目標達成(達成 挑戦 成長 リスクテイク)
・自律裁量(自律 信念 芸術 創造性)
・地位権限(進歩 認知 権威 経済的成功)

●調和志向
・他者協調(調和 交流 帰属 社会的関係)
・安定保障(一貫 安全 安定 労働環境)
・公私調和(調和 家族 快適 多様性)

 大谷選手は、日本ハム時代から契約更改で注文をつけたことはなかったようです。だとすれば、経済的利益を求めるというモチベーションファクターは高くなかったと言えるでしょう。

 メジャーリーグも日本のプロ野球も、当初は成功するはずがないと否定的だった二刀流にこだわり、信念を持ち続け、リスクを承知で挑戦し続けた姿は、目標達成、自律裁量型の典型的なモチベーションファクターを持っていると言えそうです。

次のページ 
相手が好む「殺し文句」の見出し方

1
2
チームを動かすファシリテーションのドリル

「1日1分30日」のセルフトレーニングで、会議をうまく誘導し、部下のモチベーションを自然にあげられるようになる!

 
4
5
関連記事
6
7