「オワコン」と言われる今こそ 連ドラを観るべきワケ

ヒットの法則から外れた恋愛ドラマは苦戦

 さて、ではどのようなドラマがヒットしているのか。共通しているのは、“一話の中での起承転結”だ。今期の作品で言えば、『コンフィデンスマンJP』や『正義のセ』、『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系列木曜21時〜、波留主演)などはまさに一話完結モノだからわかりやすい。『ブラックペアン』や『陸王』、『半沢直樹』などは1クールを通じてのストーリーモノでありながら、毎週1話ごとに視聴者の溜飲を下げる場面が必ず用意されており、さらに次の放送が待ち遠しくなる仕掛けがある。1クールすべて見終わってスカッとするのではなく、毎週起承転結があって見どころがある。こうした展開が、3か月という長期間に渡って毎週ドラマを見続ける視聴習慣につながっているのだろう。  一方で、全体的に苦戦しているのが恋愛ドラマ。恋愛ドラマのキモは、いわば“すれ違い”。毎週何らかのハプニングが起きてすれ違いが起き、それを乗り越えるもまたすれ違いの種がまかれる……という展開を繰り返して最終回のハッピーエンドに近づいていくのが王道パターンだ。往年の大ヒットドラマ『東京ラブストーリー』(’91年)なんてまさにそれを地で行く物語。ところが、『東京ラブストーリー』の時代とは違い、現実の恋愛はスピード感がましている。スマホもSNSもある時代に、そうそうすれ違いの連続なんて起こりえない。ドラマの中で無理をして毎話すれ違いによる起承転結を描けばそれこそリアリティを欠いて観ていて退屈になってしまうのだ。  近年の恋愛系ヒットドラマというと『逃げるは恥だが役に立つ』(’16年)が思い出されるが、この作品が飽きられなかったのは「契約結婚」という設定によって「凡庸なすれ違いの連続」という恋愛ドラマの負の法則に陥らずに済んだからと言えるだろう。いずれにしても、いかに“すれ違い飽き”を起こさせないかが恋愛ドラマのカギとなっている。  現在放送中の連ドラを中心にあれこれ見てきたが、つまるところ“日本のテレビドラマは終わった”と言われる現在もヒット作は生まれているし、たとえ視聴率が低迷していても観ていて楽しめる作品は意外とあるということだ。  そしてもうひとつ、連ドラの魅力は“来週が楽しみになる”こと。日々の仕事に忙殺されるなか、連ドラを観なければ来週を楽しみにするようなことなんてそうそうない。1クールで10~12話。映画ならば4~6本にもなる時間。テレビドラマでは、それだけ中身の濃い物語が展開されているのだ。それを毎週楽しみに追いかける。今では放送終了後もネットでまとめて簡単に視聴できるようになったが、“あのドラマの来週の放送が楽しみ”と思って日々を過ごすだけで、毎日の暮らしがちょっとだけ豊かになるような気がするが、いかがだろうか? <文/境正雄>
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