国家宇宙会議とNASAがどのように運営されるのかに注目
ブランデンスタイン氏はかねてよりトランプ大統領の宇宙政策を支持しており、それが長官任命の一因にもなっている。トランプ大統領が同氏をNASA長官に任命した背景には、自身の方針どおりに宇宙開発を進めるために、国家宇宙会議とNASAをつなぐ潤滑油、言い方を変えれば操り人形となることを期待しているのだろう。
また、ブランデンスタイン氏は議員時代から宇宙ビジネスの振興に熱心でもあり、スペースXのような民間の宇宙企業にとって追い風となるかもしれない。
いっぽうで、トランプ大統領から目の敵にされている、地球環境や宇宙望遠鏡の計画に携わる科学者たちにとっては悪夢であろう。もっとも、NASAの計画をどうするかは議会の承認を得る必要があり、トランプ大統領やブランデンスタイン氏の要望がすんなり通るわけではない。実際、2018会計年度の予算案でもいくつかの地球観測衛星や宇宙望遠鏡の中止が盛り込まれたものの、その後議会でひっくり返され、大半は中止を免れることになった。
共和党の中にも反対者がいることからしても、NASAが明後日の方向に迷走することは考えにくい。しかし、その可能性はトランプ政権が続く限りは残り続ける。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)も、NASAと有人宇宙計画や宇宙探査、環境観測などさまざまな面で協力しているだけに、日本にとっても他人事ではない。
今後、トランプ大統領が宇宙政策をどのように進めるのか、そして国家宇宙会議とNASAがどのように運営されるのかに注目される。
NASAが開発中の有人月飛行ができるロケット「SLS」。しかし開発費が高騰している上、開発スケジュールも遅れている Image Credit: NASA
<文/鳥嶋真也>
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュースや論考の執筆、新聞やテレビ、ラジオでの解説などを行っている。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)など。
Webサイト:
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Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・Vice President Pence Swears in New NASA Administrator Jim Bridenstine | NASA(
https://www.nasa.gov/press-release/vice-president-pence-swears-in-new-nasa-administrator-jim-bridenstine)
・Jim Bridenstine’s Senate Confirmation as NASA Administrator | NASA(
https://www.nasa.gov/press-release/statements-on-jim-bridenstine-s-senate-confirmation-as-nasa-administrator)
・NASA Administrator Jim Bridenstine | NASA(
https://www.nasa.gov/about/highlights/bridenstine-biography.html)
・Bridenstine narrowly confirmed in Senate to become next NASA chief – Spaceflight Now(
https://spaceflightnow.com/2018/04/19/bridenstine-narrowly-confirmed-in-senate-to-become-next-nasa-chief/)