日本でも若者ほど自民党支持というのはここ最近報じられているが、これはブラジルでも同様で、ボルソナロを支持している層の60%は16歳から34歳の若者なのである。
リオデジャネイロ連邦大学の政治学教授、カルロス・エドゥアルド・マルティンス氏は、この現象について「今日、若者は社会主義思想の政権にもううんざりして、それを変えるのに政治により関心を持つようになり、それが保守主義候補者の方に若者の支持が向かっている」と指摘している。
更に、同教授は「国内や外国の企業家が資金を提供して若者の中から政治リーダーを養成するという戦略がブラジルに存在しており、その先導役になっているのが、シンクタンク“ブラジル200”だ」とも指摘している。200という数字が生まれたのはブラジルの大手企業200社がそれを支えているからだそうだ。そこでは若者に奨学金も支給されているという。
“ブラジル200”が巧妙なのは、ボルソナロを支持しているゲイや黒人が、彼の演説内容などを下層社会に伝える役目を担っていると同教授は指摘している。一般に、ボルソナロの思想は伝達者が仲介しないと下層社会にまでは届かないというのが実情だからである。
その戦略もあり、2つの若者のグループ「ブラジル自由運動(MBL)」からボルソナロのフェイスブックへのフォロワーは270万人、「Vem para Rua」から190万人が同じくフォロワーになっているという。(参照:「
El Confidencial」)
更に、ボルソナロに追い風が吹いているのはラテンアメリカでも最強の軍隊だとされているブラジルの軍部が彼を支持していることである。社会治安が乱れている現在、それを治めることができるのはボルソナロが適任者だと考えているのである。
また、ボルソナロは、ブラジルが1964年から1985年まで軍事政権下にあった時の最後の軍事政権時に陸軍で大尉だったという経歴も持っていることから、軍人も彼には親近感を持っているのもその理由のひとつだ。
サン・パブロ大学の世論調査によれば、ルセフを罷免させるのに、39%の市民が軍部の介入を支持したという結果が出たそうだ。軍事政権下にあった時は欧米との関係を保ち,工業化を図りそれが周辺諸国にも影響を与えていた。但し、軍事政権下ということで労働組合の活動は弾圧され、また貧富の差も縮まることはなかった。それでも社会秩序は守られていたとして評価する人が多いのだ。(参照:「
LETRAS LIBRES」)
これまでも、もしルラが大統領に再選された場合は軍部が動くということは将軍などの発言に見られていた。4月にもルイズ・ゴンザガ・シュロエデル・レサ退役将軍が、「ルラが収賄罪から保釈されるようなことになると、ブラジル市民の間で暴動が発生するであろう」と述べて、更に「ルラが再度プラナルト大統領官邸に戻るようなことになれば、軍部が戒厳令を敷くことになろう」と指摘して、軍部によるクーデターがあることを仄めかす発言をしていたほどだ。(参照:「
Prefil」)
軍部と同様に企業経営者も、ルラの社会主義政権が復活することを極力嫌っている。その意味でも、ボルソナロの発言に過激性が見られるものの彼を支持する方向に動いているのである。