増えるローカル線廃線の陰で、あまり報じられない廃線後の状況と沿線自治体住民のホンネ
今や、日本は鉄道縮小時代に突入しているのかもしれない。
新幹線の海外輸出のニュースを目にしたり、都心部の住人はなんの不自由もなく毎日鉄道を使っているので、日本は鉄道大国だと思っている人も多いだろう。しかし、鉄道大国という言葉が当てはまるのは、それこそ大都市と新幹線だけだ。地方に目を向ければ、ほとんど誰も乗っていない1両編成の車両が、1日数往復しかしていないようなローカル線ばかりである。そして、そんなローカル線が毎年のように廃線になっているのだ。
記憶に新しいところでは、今年4月1日にJR三江線、さらに‘16年12月には北海道を走る留萌本線留萌~増毛間が廃止された。また、‘19年春には北海道の石勝線夕張支線の廃止が予定されている。つまり、このところ毎年1路線のペースで廃線が続いているということだ。北海道を中心に廃止を含めて議論がされている路線も多く、当分はこうした傾向が続くことになるだろう。なぜ、ローカル線は相次いで廃止されているのか? 自身もローカル線の旅を愛するというある鉄道ライターは次のように話す。
「単純に、誰も乗っていませんから。すでに廃止された留萌本線や三江線では通学の高校生すらほとんど見かけない状況が長く続いていました。車社会が浸透している地方ローカル線にとっては、通学で利用してくれる学生の存在がいわば生命線。ところが、その学生たちもスクールバスなどに流れている。そのため、朝の通学時間帯でも車内はガラガラ。そのうえ、大雨などの自然災害ですぐに運転見合わせになるとなれば、ますます利用者離れが加速してしまいます。残念ですが、廃線は当然の流れでもあるんです」
こうした“ローカル線廃止“に対して、地元自治体は当然反対の声を挙げている。事業者であるJR側と数年に渡る綱引きの結果、やむを得ず廃止を受け入れたというケースがほとんどだ。だが、実際に廃線後に地域の生活が不便になったという声はあまり聞かれない。あるローカル線沿線自治体の関係者は、声を潜めて話す。
「正直なところ反対するのはJRから廃止後の補償について好条件を引き出すためという側面が強い。日常的に乗っている人がいないんだから、廃止になっても誰も困りませんよ。みんなマイカーやバスで移動するのが当たり前だから。そもそも学校や病院、商業施設が鉄道を使って訪れられるような場所にないんです。『鉄道がなくなれば高齢者の通院が不便になる』という意見を耳にします。でも、駅から徒歩30分の病院に誰が鉄道で行くんです? 目の前まで行ってくれるバスやデマンドタクシーを使うのが当然でしょう」
もちろん、本当に誰も乗っていないわけではなく、どんな路線でも地元住民が数人程度見受けられる。そうした人たちにとって、廃線は生活の不便さに直結するわけで、そのケアを充分に考えなければならない。しかし、車社会の地方では鉄道の廃止が生活に及ぼす影響は限りなく小さいのが現実なのだ。
「鉄道廃止の話が出ると、大手メディアは『地方切り捨て』というスタンスで報道したがります。でも、実際にはとうの昔にこちらの方から鉄道を見捨てているようなもの。都会と違って地方では駅から離れた場所に街の中心があるのが当たり前だし、車社会を前提とした街づくりを進めてきましたから。こうして利用者、さらに列車本数が減って、ますます鉄道が不便になる悪循環に入る。その行き着くところが廃線なんです」(前出の自治体関係者)
鉄道廃止も地域には影響なし?
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