「国家宇宙会議」を24年ぶりに復活させる書類にサインするトランプ大統領 Image Credit: NASA
アポロ計画で人類が月に降り立ってから、まもなく50年が経とうとしているが、人類はいまだ、地球のまわりを回る国際宇宙ステーションに滞在し続けるだけで、月より遠くの天体はおろか、月へふたたび訪れることすらしていない。
それでも米国航空宇宙局(NASA)などは、2020年代以降の実現を目指して、国際共同で月や火星に宇宙飛行士を送り込もうという計画を進めており、有人宇宙活動は新しい局面を迎えつつある。しかし、本当に実現するかは不透明な状態にある。
それを尻目に、民間企業は独自に月や火星を目指す計画を進めている。こうした動きを背景に、日本の国としての国際宇宙探査や有人宇宙開発をどう進めるかも再考する時期に来ている。
現在NASAでは、有人月・火星探査を目指す計画が、少なくとも名目上は進んでいる。
この計画の源流は、2004年にブッシュ大統領が発表した宇宙政策にまでさかのぼる。計画の遅れを受け、次のオバマ政権では計画が修正されたものの、有人月・火星探査を目指すという方針はほぼ受け継がれた。
そして現在のトランプ政権になってからも継続されたばかりか、トランプ大統領自ら「ふたたび月に米国の宇宙飛行士を送る」という目標を掲げたことで、より月にフォーカスした方針に改められることになった。
「強いアメリカを取り戻す」というトランプ大統領にとって、月に宇宙飛行士を送り込むというような大規模な宇宙事業には高い関心をもっているようで、2017年10月には「国家宇宙会議」を24年ぶりに復活させ、大統領・政権が直々に宇宙政策を進められる体制が組まれた。
NASAや産業界などは、こうした大統領の「ふたたび月へ」という意向を受けて、ロケットや宇宙船の開発を継続しつつ、月のまわりを回る宇宙ステーション「月周回プラットフォーム・ゲートウェイ」(LOP-G)を建造する検討を進めている。この宇宙ステーションは、月の有人探査の拠点となり、さらに将来、有人火星探査の実現に向けた準備や予行練習を行う基地として活用するとされる。
こうした動きは、もちろん米国だけでなく、現在米国と共同で国際宇宙ステーション(ISS)の運用にかかわっているロシアや欧州、そして日本などにも影響がある。すでに、ISSにかかわっている国々が引き続き、LOP-Gの建設にも参加するという検討が進んでいる。
NASAなどが検討を進めている月を回る宇宙ステーション「月周回プラットフォーム・ゲートウェイ」の想像図 Image Credit: NASA