テレビにのさばる熟女たちが、うらやましくて仕方がない理由<北条かや>

「男性から、若くて魅力的な女だと思われたい」というズルさからの解放

 私には、「世間一般の男性たちから、若くて魅力的な女だと思われたい」というズルさがある。女の魅力を序列化するゲーム、その土俵上で自分を認めてもらいたい。ところが、一度「ババア」とレッテルを貼られてしまうと、土俵にすらもう上げてもらえないのだ。相撲を取る資格が剥奪されてしまうようなものだ。  だから、隠れて美容注射を打ったりレーザーを当てたり、キレイに見える自撮りを研究したりする。必死である。必死な自分は恥ずかしい。  そんな自分とは対照的に、テレビで見る美熟女たちは、年齢的に「女の土俵」がどうのというレベルの煩悩からは解放されている。彼女たちは、(出産が云々というレベルでは)女を降りながら、外見的には完全に女。しかも美女だ。  若い男とたわむれるのは楽しいが、まさか若い女と競い合おうとは思っていない。そもそも若い女なんて、大女優の「私」と比べればヒヨッコでガキみたいなものだからだ。  そういう意味でも、他者と自己を比べて「美しいか、ブスか」なんてレベルの煩悩からは解脱しており、自分が自分を好きであればいいのよという、究極の自己満足の自由を生きている。  その自意識が、私にはとても眩しい。いつになったら、あの域に達することができるのだろうか。私も、彼女たちのように、本当の意味で「女のコスプレ」がしたい。まだまだ煩悩からの解放は遠い。 (文・北条かや) 【北条かや】石川県出身。同志社大学社会学部卒業、京都大学大学院文学部研究科修士課程修了。自らのキャバクラ勤務経験をもとにした初著書『キャバ嬢の社会学』(星海社新書)で注目される。以後、執筆活動からTOKYO MX『モーニングCROSS』などのメディア出演まで、幅広く活躍。著書は『整形した女は幸せになっているのか』(星海社新書)、『本当は結婚したくないのだ症候群』(青春出版社)、『こじらせ女子の日常』(宝島社)。最新刊は『インターネットで死ぬということ』(イースト・プレス)。 公式ブログは「コスプレで女やってますけど
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