「泰明小学校アルマーニ騒動」の根底にある、アイテム主義という時代錯誤。服飾の専門家が一刀両断

「小学生の服が、父親のスーツより高いかもしれない・・・」  東京・銀座にある中央区立泰明小学校がイタリアの高級ブランド「アルマーニ」監修のデザインの制服を標準服に採用し、高額すぎるといった批判の声が出るなど、議論を呼んでいます。  今回、泰明小学校の標準服問題で世間がザワついている根底にあるものは、一体何なのでしょうか?
泰明小学校

画像はイメージです(以下同じ)

 校長が独断で決めたこと、小学生の制服・標準服の相場を逸脱していること、また、標準服を買えない事によるいじめ問題リスクなど、さまざまな論点が見受けられますが、私は「服に対する日本人の感覚」に着目しました。

ビジュアルアイデンティティーの期待と誤算

「プロの目線でユニクロもカッコよく!」をモットーに、のべ4000人を超えるビジネスマンの買い物に同行してきた私が、服の専門家として、泰明問題に見た「ビジュアルアイデンティティーの期待と誤算」について、その考察をお伝えします。

視覚効果が人の心に与える影響は大きい?

 白衣を着た人から渡されたビタミン剤が身体に影響を及ぼすプラセボ効果からもわかるように、人間の心は目に見えるものから必ず影響を受けています。組織が推奨する標準服であれば、着る人の心に帰属意識を与える効果を期待できることは間違いありません。  泰明小学校が2017年11月17日に保護者向けて発信した「平成30年度からの標準服の変更について」という説明全文を読む限り、ブランドに対する帰属意識心理を活用することを目的とし、アルマーニ導入を決めたよう見受けられます。その理由は、文中に登場する「ビジュアル・アイデンティティー」という言葉から分かります。  ビジュアル・アイデンティティーとは、マーケティング用語の一種で、企業が伝えたいイメージを視覚的に訴えるコミュニケーション手段のことを指します。ここでは泰明小学校というブランド力を高め、そこに所属する生徒・父兄の帰属意識を高めるという狙いがあるのではないでしょうか。  もちろん、アルマーニである必要はなく、既存の標準服であってもアイデンティティーの形成生まれます。今回、高級ブランドを活用することで、学校に対する帰属意識を、さらに特別なものにするという明確な意図は伝わってきました。  ただし、その効果と費用のバランスが不均衡だということ、そして、そもそもビジュアル・アイデンティティーという考え方が、今という時代に逆行していることが最大の問題だと私は見ています。
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ブランド志向からの脱却がもたらす恩恵
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