「泰明小学校アルマーニ騒動」の根底にある、アイテム主義という時代錯誤。服飾の専門家が一刀両断

時代に逆行!? ビジュアルアイデンティティー概念

 小学生の標準服とビジネスマンのスーツを同一視することは適切ではないかもしれませんが、働き方改革によるカジュアル・フライデーの導入を進める上場企業の動向を見る限り、ビジュアル・アイデンティティーという概念がそもそも時代に逆行しているのではないでしょうか? ビジネスファッション もちろん、教育という観点から、児童には必要なコンセプトなのかもしれません。もしくは、こんな時代だからこそ必要だということかもしれません。それでも、効果と費用のバランスを見る限り、社会に受け入れがたい施策だったことは明らかです。 「右に倣え」という言葉があるように、良くも悪くも、昔から日本人は権威・ブランドに弱い傾向がありました。ところが、ユニクロをはじめとするファストファッション業界やTHE SUIT COMPANYをはじめとするツープライススーツ量販店業界の品質向上と拡大はとどまるところを知りません。  よって、もはや世間がブランド志向から脱却しはじめているからこそ、今回の問題がこれだけ話題に挙がっているのではないでしょうか。

ブランド志向からの脱却がもたらす恩恵

 これまでブランドに弱かった我々日本人の多くは、アイテム主義を貫いていました。価格帯を問わず、好みのブランドアイテムを身につけることが良しとされ、その結果、コーディネートという概念が希薄だったのです。  流行を追求する「ファッション」、アイテム同士の調和を追求する「コーディネート」! 「ファッションコーディネート」という言葉から、2つは混同されがちだったのです。ところが、定番を追求するユニクロの台頭や「服育」という言葉の認知拡大から、いよいよ日本でも「コーディネート」が注目される時代になってきました。  何より、近年ビジネスファッションに起きているカジュアル化の現象がコーディネート認知に大きな影響を与えています。上下同一生地のスーツにくわえ、上下生地が異なるジャケパンのバランスを整える必要があるからです。
次のページ
時代が求める2つのコーディネート視点
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会