ギャラ未払いで係争中のタイリーグ所属・下地奨「稼ぐことの意味を考え直すようになった」

タカ大丸

タイで「稼ぐことの意味」を改めて考えるようになった

 ここ数年、タイに進出してからの下地は順調な日々が続いていた。 「心のスキができていたのでしょうね。日本の選手にも、代理人との関係は僕の経験を通じて考え直してほしいなと思います。もっとドライであるべきだと思いますね」  筆者も詐欺にあった経験があるのでよくわかるが、こういうときは金銭的損失も大きいが何より一度は信頼した人から騙されたという心理的打撃がさらに大きい。  最近でこそ、チャナティップ・ソングラシンをはじめとして続々とタイ人選手がJリーグに参戦してきているが、国全体としてはまだまだという部分も大きいという。 「選手もそんなに志が高い人は多くないし、クラブも哲学がなく、代理人も流行りを追うだけで中身がない人が多いです。だから、善悪は別としてブリーラムみたいにシーズン前期優勝を果たした監督をすぐ解任しても、オーナーはぶれないからあそこは強いんですよ」  あらためて、下地はお金に対する強い思い・執着を語ってくれた。 「やっぱり、勇気をもってより多くお金をもらっていかないと、世のため人のためにならないですよね。もらうということは、それだけ価値を提供しているという証明ですから。そこでお金はいらないよという態度をとるのは、自分本位にすぎますよ」  それは、タイにいるからこそ強まる思いのようだ。 「だって、タイには未だに路上に寝る子供が沢山いるわけですよ。お前が稼いで孤児院・家を作ってやれよ、という話ですよね。日本でも貧困に苦しむ子供が増えている。もっと稼げばその子たちを大学に行かせられるかも知れないじゃないですか」  最近、相撲が大問題になっている。 「善悪は別としてですが、相撲は衣食住が保証されるわけでしょう。あれだけ一番下っ端の序の口力士まで含めて全てを用意してあげられる、食わせていけて文化にまで昇華できている仕組みって、すごいと思うんですよ。ただそのときに自分も含めて一つネックになるのが、持ち家がないということなんですよ」  タイは外国人が土地を所有することができない。コンドミニアムまでである。 「全世界の人に持ち家が一軒ずつあれば家賃のために働く必要がなくなるし、夫婦共働きもなくなって、みんなが少なくともスタートラインに立てるし、人のことを考えられるようになるんですよ。最近はそんな世界を夢想することが多いですね」  豊かさについて、下地は実地で体験してみたのだという。 「一度、月三千ドルくらい払って200平米の豪邸を借りて住んだことがあるんですよ。そのとき思ったのはね、確かにここにずっと住めたら嬉しいけど、今じゃねえなと。そこを持って、貸して、家賃収入を得ている人がやっぱり強いんですよ。僕はまだ働き続けて家賃を払わなければいけない。僕自身がマンション一軒もって、家を提供する立場になれば、そのときこそどこにでも心置きなく住めるようになるんですよ。 カレン・ロバートみたい(参考『「インドでは2か月で2万円しか使わなかった」元J1所属カレン・ロバートの堅実すぎる金銭感覚』)に、やらなくてもわかる頭のよさがあればいいんですけど、僕にはないですから。サッカー界でも、あそこまで頭がよくて十年先二十年先を見通せるヤツはなかなかいない。そこに至るためにも、稼ぐ覚悟、もらう覚悟というのをもう一度しっかりさせなければと思います」  こう言い残し、下地は再びバンコクへ旅立っていった。 【タカ大丸】  ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。  雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト
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