北レス続々閉店。ついに瀋陽七宝山ホテルが営業停止。親会社鴻祥の処分がポイントに

 話を七宝山ホテルへ戻そう。日本の新聞でも同ホテルの営業停止を速報で伝えたのであるが、それは、同ホテルが中朝ジョイントベンチャーの象徴だけではなく、北朝鮮の領事館的な役割を果たしていたり、工作活動拠点に使われていたとも言われていたため常にその動向が注目されたのだ。  七宝山ホテルには「高麗航空」のオフィスや「朝鮮国際旅行社(KITC)」瀋陽支社が入っていたがそれらはどうなったのだろうか。普通に考えると建物自体が閉鎖されたのだから建物内の企業も出ていくと思われるが、10日確認すると普通に営業を続けていた。  建物のメインゲートが閉じられているので通用口のような裏口からお客を通しているのだろう。元々来客は少ないので問題なさそうだ。  瀋陽の不動産関係筋によれば、すでに旧七宝山ホテルは売却交渉に入っており、「両社とも売却後もテナントとして引き続き入るとの約束をしていると聞く」と本サイトへ明かす。  売却後もホテルとなる可能性が高いと前出の不動産関係筋は話すが、その際に問題となるのは、鴻祥との関係ではないかと指摘する。

濃縮ウラン密輸疑惑の鴻祥代表・馬暁紅の処遇が鍵 

 人口800万人の瀋陽を省都とする遼寧省はマイナス成長が続き経済的に苦しい。マイナス成長を記録するのは中国全土で遼寧省だけで、統計が確認できる改革開放政策が始まった80年代以降で中国は国としてはマイナス成長を経験したことがなく、経済が市場経済化しても不況知らずだったのが、遼寧省は、中華人民共和国初の大不況に陥っているのだ。  事実上、初めての不況なので日本のようにある意味で不況慣れしているのとは違い免疫が乏しく消費マインドは急速にしぼみ、倒産が増え、仕事が減るという経済学の教科書のような不況スパイラルにはまり込んでいる。  遼寧省や瀋陽市も不況を脱するための経済政策を実施しているが、職にありつけない市民からの不満は蓄積されており、中朝合弁とはいえ中国人の職を奪うことにもなる大々的な廃止は市民の不満が政府へ跳ね返ってくることも考えると慎重にならざるを得ない。  中朝貿易に長年携わってきた中国人実業家は、中国の中央政府や地方政府が鴻祥をどう扱うかがポイントだと語る。 「遼寧省を代表する鴻祥の馬暁紅代表は、北朝鮮との交易をめぐり一昨年8月から軟禁状態が続いていますが、韓国メディアが報じたように濃縮ウランなど核物質を密貿易したとは中国国内では報じていません。彼女の容疑は脱税などと伝えられています。にもかかわらず長期間の軟禁が続く理由は、馬と鴻祥経営陣を独自の制裁対象にしたアメリカの目を意識しているからだと思われます。  傘下である丹東の柳京飯店、『鴻祥国旅』も秋から休業しているなど鴻祥なら強く出ても問題ないと考える反面、やりすぎると経済がさらに停滞するため政府はどう対応するか頭を悩ませているのでしょう」 <取材・文/中野 鷹 Twitter ID: @you_nakano2017
なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会