H-IIAロケット37号機の打ち上げ Image Credit: 三菱重工/JAXA
三菱重工と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2017年12月23日、日本の主力大型ロケット「H-IIA」37号機の打ち上げに成功した。
2001年に運用が始まったH-IIAロケットも、これまでに37機が打ち上げられ、成功回数は36回。また、7号機以降はすべて連続で成功し続けているなど、高い信頼性ももっている。コスト、価格面で他国にやや遅れは取りつつも、その実力が徐々に認められつつあり、海外の衛星会社からの商業打ち上げの受注も少しずつ獲得している。
そのH-IIAロケットが、今回の打ち上げで新たな挑戦に臨んだ。それは、ロケットに2機の衛星を同時に積んで打ち上げ、それもそれぞれ異なる軌道に投入するという複雑なもので、しかし将来の打ち上げビジネスの機会拡大につながる、とても重要なものである。
12月23日に打ち上げ予定のH-IIAロケット37号機は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した気候変動観測衛星「しきさい」と、超低高度衛星技術試験機「つばめ」という、2機の衛星を積んで打ち上げられた(「しきさい」についての参考:
『日本の人工衛星「しきさい」がまもなく宇宙へ! 気候変動の謎を解き、地球の未来を守れ』)。
H-IIAは大型のロケットなので、中型、小型の衛星であれば、2機以上を同時に搭載して打ち上げることはわけない。実際にこれまでも、複数の衛星を同時に打ち上げたことは何度もある。
ただ、それができるのは、搭載する衛星すべてがほぼ同じ軌道に入る場合のみだった。
厳密なことをいうと、H-IIAロケットの3号機では、2機の衛星を異なる軌道に投入したことがあるが、このときは2機目の衛星があとで軌道を大きく変えることを前提にしたもので、いわば「放り投げた」ようなものだった。
しかし、今回の「しきさい」と「つばめ」は、運用される軌道が大きく異なるため、それぞれ別の軌道で、ロケットから衛星を分離、投入しなければならない。それも、あとで衛星が軌道を大きく変えなくてもいいよう、それぞれが運用される軌道に、ほぼ直接に「しっかり投入」しなければならなかった。
そのためには、まずロケットが1機目の衛星を軌道に投入した後、何回かエンジンを噴射して軌道を変えて、そこで2機目の衛星を投入するという、複雑な飛行をこなす必要がある。
ロケットは基本的に、地上から打ち上げられ、目標の軌道に到達したら衛星を分離し、そこでお役御免。せいぜい十数分から数十分程度の飛行時間で運用を終えることが多い。しかし今回は、2機目の衛星のために軌道を変える都合上、1時間48分も飛び続けなければならない。
この複雑な飛行の実現のため、今回のH-IIAロケット37号機には新しい改良が施されたのである。