日本のH-IIAロケット、打ち上げ成功! 今回臨んだ新たな挑戦と、そこから生まれるビジネスチャンス

鳥嶋真也

製造中のH-IIAロケット37号機(筆者撮影)

「衛星相乗り機会拡大開発」

 この改良のことを、開発を担当したJAXAでは「衛星相乗り機会拡大開発」と呼んでいる。  2機の衛星をそれぞれ異なる軌道に投入するためには、まずエンジンを何回も噴射できるようにする必要があり、また長時間の宇宙飛行ができるようにし、さらには正確に軌道変更できるようにする必要もある。  このうち最初の2つについては、かつてH-IIAに施された「高度化」と呼ばれる改良で、ほぼ実現できる能力を獲得していた。この改良は、大型の通信衛星などを飛ばすために行われたものだったが、その成果をいかすことで、今回の改良も実現した。  3つ目の軌道変更を正確に行うための改良については、ソフトウェアを書き換えることで実現している。  じつは、H-IIAで複数の衛星を異なる軌道に飛ばそうというアイディアは、開発段階から存在していた。その背景には、そうした打ち上げの需要が考えられたこと、また、そもそもこうした打ち上げ方は米国や中国、ロシアなどはすでに実用化されており、追いつく必要があったこともある。  実際にエンジンなどは、そうした使用を想定して設計されていたものの、実際には需要が小さかったことや、その他に優先して改良すべき点があったなどから、いまになってようやく実現したのである。

製造中のH-IIAロケット37号機。外見上の大きな違いは、第2段機体。いつもは壁面がオレンジ色だが、37号機などは白く塗られている(筆者撮影)

この改良で広がるビジネスチャンス

 今回の「衛星相乗り機会拡大開発」を施した37号機の成功によって、H-IIAは、複数の衛星をそれぞれ異なる軌道に打ち上げる能力を手に入れた。  これにより、いままで打ち上げられなかった形態での打ち上げができるようになり、国内外から衛星の商業打ち上げを獲得できるチャンスが増えることになった。  たとえば近年、地球を回る低い軌道に、小型の衛星を何十機から何千機も打ち上げて地球を覆うように配備し、絶え間ない衛星通信や地球観測を行おうというアイディアがある。  こうした衛星のことを「衛星コンステレーション」といい、電子部品の小型化、低コスト化などから、小型衛星を安価に量産できるようになったことで、実際に事業化に踏み切った企業がいくつもある。たとえば昨年、ソフトバンクが10億ドルを出資したことで一躍話題となった衛星インターネットの「ワンウェブ」などはその一例である(参考:『孫正義が10億ドル出資した衛星インターネット計画「ワンウェブ」、あれからどうなった?』)。  衛星コンステレーションでは、似たような目的でも、企業ごと、あるいは同じ企業でも、衛星ごとにロケットに打ち上げてほしい軌道が異なることがある。  そこで、今回のような改良を施したH-IIAを使えば、まずある軌道でひとつ目の衛星(1機だけかもしれないし何機かまとめてかもしれない)を分離し、ロケットが軌道を変えて、別の軌道でもうひとつの衛星を分離する、ということが可能になる。  こうした、従来のH-IIAではできなかった打ち上げができるようになったこと、そして衛星コンステレーションの需要の高まりも相まって、打ち上げ受注の機会が増えることが期待できる。

数千機の小型衛星で地球を覆い、地球のどこでもインターネットにつながるようにする計画を立てている「ワンウェブ」 Image Credit: Airbus/OneWeb

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