日本のODA事業がモザンビークの小規模農家の生活を破壊する!

「感情」ではなく「事実」をもとに公聴会無効化を訴える

公聴会

公聴会出席者。会場によってはほぼ全員が計画に賛成する与党系組織の関係者だった

 2015年4月、モザンビークの対象19郡および事業対象3州の州都、首都マプトでこの計画に関する公聴会が開催された。  公聴会とは、当事者が行政に対して自分の意見を公述できる場であるが、蓋を開けてみれば、参加したのは、計画に賛成する地元の有力者、政府与党系の住民、中規模の力のある農民らが多数を占めた。その結果、「住民は事業に賛成してる」との政府見解を補強するセレモニーとして公聴会は終了した。いくつかの公聴会では、「招待状を持っていない」として計画に反対する小農の入場が拒否されたり、開催地の郡長が「ここは反対の声を聴く場ではない」と公聴会開始にあたって釘を刺したりする場面もあった。  また、これに資金提供していたにも関わらず、JICAなど日本政府の関係者は不参加。  誰かが公聴会に参加し、その内容を確認しないことには、何が起きても「モザンビーク国内の問題だ」とあしらわれることを予測した日本の市民社会は、渡辺さんを現地に派遣した。渡辺さんは公聴会の一部始終をビデオ録画、音声録音し、これらに基づいて公聴会の結果を発信した。果たして、公聴会で起きた「ファクト(事実)」に世界各地の80を超える組織や研究機関や教会などが「これはおかしい」と公聴会の「無効化」を訴えたのだ。  渡辺さんたちNGOが問題の周知にあたり基本スタンスとしたのは、「ファクト」だけを武器とすることだ。「計画反対!」との「感情」では世論の喚起にも解決にもつながらない。上記の公聴会の記録もその一つだが、NGO側が力を傾けたのは、情報公開法を駆使しての情報収集だ。その結果、およそ100件の公文書を入手する。そのなかでも、根幹的な情報をもたらしたのは「リーク」文書だった。

リーク文書をもとに明らかになった「介入」や「分断」

内部文書

「プロサバンナ コミュニケーション戦略書」の表紙。ここに事業に反対するNGOなどの活動を抑えるべきということが書かれている

 2016年4月、46ものリーク文書が出た。  そのリーク文書を基に情報公開で入手したのが、「コミュニケーション戦略書」なる文書である。  これは、2012年にUNACが計画に抗議の声をあげ、日本で外務省とNGOによる協議が開始された直後にJICAが現地コンサルタントを雇って策定されたもので、要約すると「プロサバンナ事業に異論を唱える市民社会組織や運動に対しては、JICA の資金での『介入提案と行動計画』を実行に移す」ことを目指したものだ。  実際、それに従っての「介入」や「分断」が行われた。たとえば、モザンビークの政府系新聞には「プロサバンナ事業に対する反対の声は、日本の市民社会の企みだ」との記事が掲載されたが、それこそ戦略書に書かれていた「モザンビークでの外国の諸組織の役割について問題化する、あるいは批判する」が実行に移されのだ。  2017年4月、渡辺さんたちが得た公文書等から、JICAやプロサバンナ事業が行っている政府側の計画や実施内容が明らかになり、これが人権侵害の十分な証拠になるということで、プロサバンナ事業対象地の小農ら現地住民11人が事業に対する「異議申立」を起こした。JICAが、自身が定めた「環境社会配慮ガイドライン」(開発にあたり、住民の人権や生活を尊重することを謳っている)に違反をしていると訴えたのだ。  11人は匿名だ。実名の申し立てだと政府から弾圧される恐れがあるからだ。  この申立はJICA内部での本審査対象となり、3人の審査役により文献調査と現地調査が行われたが、今年11月1日、「ガイドライン違反はない」との結果が出た。
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外務省は「人権侵害はない」との見解
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