日本のODA事業がモザンビークの小規模農家の生活を破壊する!

頻発していた土地収奪

ローカルマーケット

現地のローカルマーケットでは、多様な食べ物が売られている

 2013年2月、モザンビークから同国最大の小農組織「UNAC」(モザンビーク全国農民連合)の2人と同国の環境団体「JA!」(Justica Ambiental)の1人が、外務省やJICAに直訴するために来日した。  彼らの訴えは、「当事者である私たちが事業の情報を知ることができず、事業計画策定の話し合いにも参画もできない。まず、私たちの話を聞いてほしい」というじつに素朴なものだった。  一方の外務省側が示した見解は「これは小農支援のための事業。私たちは貧しい小農を豊かにしてあげたい」とのステレオタイプの使命感だった。  JICAの「開発」はモザンビークに何をもたらすのか。現地はどうなっているのか。それを確認するため、渡辺さんらは同年8月に2週間、モザンビークで現地調査を実施した。  出会った小農たちの話を整理すると以下のようになる。  モザンビークでは、農民には土地の所有権がないが、10年間暮らし、耕した土地については、生涯にわたる利用権が与えられる。そして、家族を基本単位として個々の農民の方針で土地利用がなされている。モザンビーク北部に暮らす小農たちは、小川から水を引き、農薬や化学肥料も使わずに多様な作物を栽培し、食料の多くを自給、余剰で乾燥した魚を年間分買うなどしていた。  その土地に、ある日突然、日本・ブラジル・モザンビークの政府がやってきて「あなたたちの農業は低生産。だから貧しい。我々が大規模な農業開発をしてあげる」と告げた。しかし計画に関する情報は一切得られず、同時に、日本や世界からやってきた投資家が「ここで大豆を生産したら、日本の商社が購入します」といった投資セミナーを展開した。  そして渡辺さんが「土地収奪の現状は、探すのに苦労しないほど頻発していました」と振り返るように、小農たちは自分たちの土地も奪われるのではとの不安に置かれていたのだ。

「小農支援」のための事業が、小農の生活を追い詰める

モザンビーク住民

海外アグリビジネスにより収奪された土地に立つ住民。企業により大豆が植えられている

 JICA(国際協力機構)が推進するプロサバンナ計画のタテマエは「小農のための支援事業」だ。  ここがおかしいと渡辺さんは強調する。 「ならば当事者である小農がなぜ話し合いに参加できないのか。なぜ計画が知らされないのか? これが判らないから、モザンビークからわざわざ来日したのです。投資セミナーは2013年4月までは確実に行われていて、日本の商社も参加していました。主権者はいったい誰なのでしょうか?」(渡辺さん)  不安に思った小農が政府に疑問の声をあげると「投獄するぞ」と脅される。このままでは、知らないうちに土地を収奪されてしまう。実際、国内各地では国内外の企業が「投資だ」「開発だ」と小農たちから土地を奪い始めていた。そこで生産されるのは、自分たちが食べない大豆。モザンビーク政府も自分たちの権利を守ってくれない……。 「私には、モザンビークの農民の言っていることが至極まっとうに聞こえました。彼らは、自分たちの農業のあり方に誇りを持ち、それに基づいた発展のビジョンももっている。一方で、現実を見ず、彼らを『貧しい』と決めつけ、情報開示せずに彼らに「変わること」を強制する『開発』は一方的です。私はモザンビークの農民たちのビジョンや主張に共感し、彼らとともに活動するようになりました」(渡辺さん)  以後、渡辺さんは南アフリカでの活動を行う一方、モザンビークを4年間で9回訪れた。
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明らかになった「介入」や「分断」
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