“マネキン・スカイウォーカー”宇宙へ! Amazon創業者のロケット、宇宙旅行の実現に向け開発進む

ニュー・シェパード Image Credit: Blue Origin

宇宙旅行を目指す「ニュー・シェパード」ロケット

 そんな”手頃な宇宙旅行”を実現するため、ニュー・シェパードも小型で、そして低コスト、低価格なロケットを目指している。  とくに、飛行機のように、機体を何度も再使用することができる点が大きな特長で、これによりコストダウンを狙っている。奇しくも、同じ大富豪で宇宙企業を立ち上げたイーロン・マスク氏も、同じくロケットの再使用でコストを安くしようとしている。  ロケットの先端には宇宙船(カプセル)が載っており、乗客や科学実験装置が搭載できる。側面には大きな窓もあり、絶景を思う存分楽しめるようになっている。また宇宙船も、コストダウンなどを図るため、やはり再使用ができるようになっている。  ちなみに、ロケットと宇宙船が組み合わさった状態の機体は、なんとも言えない独特の形状をしており、ちょっとしたネタになることも少なくない。  ニュー・シェパードの1号機は2015年4月に完成し、打ち上げが行われるも、ロケットが着陸に失敗。機体は失われてしまった。続いて完成した2号機が同年11月から打ち上げ試験を開始し、2016年10月までに5回の飛行を行った。  2号機が5回飛行した、ということは、つまり2号機の機体は4回再使用された、ということである。この打ち上げ試験を通じて、ブルー・オリジンはロケットを運用するのに必要な知見を学び、たくわえていった。

着陸するニュー・シェパード Image Credit: Blue Origin

“マネキン・スカイウォーカー”、宇宙へ!

 そしてこれらの試験を経て開発されたのが、今回打ち上げられたニュー・シェパードの3号機である。この3号機では2号機からいくつかの点が改良されており、人を乗せて飛行するために、より安全性やメンテナンス性などを高めた設計になっているという。  また、宇宙船も改良され、外を眺めるための大きな窓も、これまでのダミーから本物が取り付けられるなどし、安全性はもちろん快適性も向上している。  3号機は12月13日1時59分(日本時間)に、テキサス州にある同社の試験施設(ちなみにベゾス氏個人所有の土地でもある)から打ち上げられ、高度約100kmに到達。その後、ロケットも宇宙船も無事に着陸に成功した。  今回の打ち上げ試験では人は乗らなかったが、代わりに「マネキン・スカイウォーカー」と名づけられたマネキン人形が乗せられ、人体にかかる影響などの評価が行われた。もちろんこの名前は、『スター・ウォーズ』に登場するアナキン・スカイウォーカーをもじったものである。  また大学や企業が開発した実験装置も搭載され、微小重力環境を利用した実験が行われた。人こそまだ乗ってはいないものの、すでにただの打ち上げ試験にとどまらず、実用的な利活用はもう始まっている。

着陸した宇宙船。窓から見える脚が「マネキン・スカイウォーカー」と名づけられたマネキン人形 Image Credit: Blue Origin

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宇宙旅行がビジネス化するか?
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