さらにミサイルの下部に目を向けると、ロケットエンジンが2つあることがわかる。火星14型では1つだったので、仮に同じ性能のエンジンだとすると、約2倍のパワーがあることになる。この点も、機体が大型化しているということと合致する。
火星14型と同型のエンジンかどうかは、写真が少ないため判断は難しいが、カネや人、工場などのリソースが限られていることや、これまでの実績、ノウハウを活用できることを考えれば、同型と考えるのが合理的であろう。
また、エンジンの形式は2つの燃焼器が1つのターボ・ポンプを共有する、ソ連時代に開発されたあるエンジンの特徴と一致している。以前、ウクライナかロシアから「RD-250」というエンジンの技術が北朝鮮に流れたのではというニュースがあったが、そのRD-250もまさに同じ特徴をもっている(参照:『
北朝鮮のICBMエンジンはウクライナ製? その真偽を検証する』)。
確証が得られたわけではないが、北朝鮮がRD-250、あるいはそれに関連する技術を手に入れたという可能性はより高くなったといえよう。
ロシアの宇宙企業エネルゴマーシュの展示室にあるRD-250エンジン。これと同型のエンジンが搭載されている可能性がある Image Credit: NPO Energomash
ただ、そうだとするとおかしな点もある。火星14型では、メインとなるロケットエンジンの周囲に、ヴァーニア・エンジンと呼ばれる小さなロケットエンジンが4基、円周状に装着されていた。ヴァーニアは噴射の向きを変えることができるようになっており、これを動かすことでミサイルを制御することができる。メインのエンジンはただまっすぐ噴射し、ミサイルの姿勢や飛行の方向を変えるときはヴァーニアを使うのである。ちなみにオリジナルのRD-250も同じように、RD-250そのものはノズルは動かず、ヴァーニアを使って制御していた。
ところが、火星15型にはヴァーニアらしきものは見えず、かといって翼などの他の制御装置も見えない。しかしミサイルはたくみに制御されていた。これを説明するには、火星15型のメイン・エンジンそのものが動き、噴射を方向を変えられる仕組みになっていると考えるしかない。
ちなみに発射翌日の朝鮮中央通信の報道では、このエンジンについて「推進力ベクトル制御を実現した」とされており、北朝鮮自身もそのように主張している。
メイン・エンジンを動かして機体を制御するというのは、米国や日本などの近代的なロケットやミサイルではごく一般的に使われている仕組みだが、オリジナルのRD-250にはなく、また北朝鮮にとっては、少なくともこれまで確認されているミサイルでは使われていない新しい技術でもある。
もし北朝鮮が本当にRD-250を手に入れて使っているのだとしたら、ノズルを動かすための独自の改良を加えた上で、実際に打ち上げることに成功した、ということになる。あるいは、もしRD-250を使っていないなら、その技術力はよりたしかなもの、ということになろう。