観測史上初、太陽系の外から謎の天体が飛来! 「オウムアムア」と呼ばれる天体の正体とは?

欧州南天天文台がもつ高性能な望遠鏡で撮影したオウムアムア。すでに遠くにいるため、このような点にしか写らないが、天文学者はここから多くのことを読み取る Image Credit: ESO/K. Meech et al.

自然現象か? それとも……?

 もうひとつの大きな謎は、この天体がいったいどのようにして太陽系にやってきたのか、ということである。  最も考えられるのは、別の惑星系の外縁部にあった天体が、なにかの拍子に弾き飛ばされ、その惑星系を脱出して移動を開始し、数万年から数億年もかけてはるばる太陽系にやってきた、という経緯である。  前述のように、こうした天体現象が起こりうることは古くから予測はされていたため、その予測が裏付けられたというだけで、それほど驚くようなことではない。また逆に、私たちの太陽系から、どこかの惑星系へ飛んでいった天体もあるかもしれない。  オウムアムアが飛来したのは、現在こと座のヴェガがある方角からだった。しかし、太陽系からヴェガまでの距離と、オウムアムアの速度を考えると、飛んでくるまでに少なくとも3万年は経っているはずだが、いまから3万年前のヴェガは現在とは異なる位置にあったため、ヴェガ系で生まれてやってきたとは考えにくい。はたしてどこから、そしてどれくらいの時間をかけて飛んできたのかはまだわかっておらず、今後の研究に期待したい。  さらに突拍子のないことをいえば、異星人の乗り物だったり、あるいは異星人が送り込んだ無人探査機だったりという可能性もないわけではない。――「ないわけではない」、というのはちょっと誤解を招く言い方で、要は誰も確認しようがないので、完全に否定ができないというだけであり、少なくともその説を真面目に支持している天文学者は、いまのところいない。  ただ、だからといって、可能性を完全に否定するのはもったいない。思考実験としてその可能性について考えるのは、想像力を鍛え、そして私たち地球人がなぜ存在しているのか、この宇宙でひとりぼっちなのか、という存在意義について考える上でも、決して無駄なことではないはずである。  天文学者、専門家らが、この天体のことを恒星間小惑星(Interstellar Asteroid)や恒星間天体(Interstellar Object)だけでなく、「恒星間からの来訪者」(Interstellar Visitor)という呼び方をしているのも、そうした茶目っ気と淡い期待の現れだろう。  オウムアムアは太陽系に接近後、太陽の重力でコースをほぼ反転し、いまはペガスス座がある方向に向けて、秒速約40kmで飛び続けている。いつかは太陽系を脱出し、ふたたび恒星間空間に戻ることになるが、その後はどこへ行くのかまだわからない。そして人類は、その正体も行く先も、知ることはできないだろう。  秋の夜長、SF小説を片手に、この奇妙な来訪者に思いを巡らせるのもまた一興かもしれない。

欧州南天天文台が作成したオウムアムアの想像図。天文学者らは細長いペンのような形をしていると考えている Image Credit: ESO/M. Kornmesser

<文/鳥嶋真也> とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。 Webサイト: http://kosmograd.info/ Twitter: @Kosmograd_Info(https://twitter.com/Kosmograd_Info) 【参考】 ・ESO Observations Show First Interstellar Asteroid is Like Nothing Seen Before | ESO(https://www.eso.org/public/news/eso1737/) ・Earth’s First Known Interstellar Visitor Unmasked(http://www.ifa.hawaii.edu/info/press-releases/Oumuamua/) ・Solar System’s First Interstellar Visitor Dazzles Scientists | NASA(https://www.nasa.gov/feature/solar-system-s-first-interstellar-visitor-dazzles-scientists) ・C/2017 U1 PanSTARRS: the first interstellar comet ever? – 25 Oct. 2017 – Tenagra Observatories, Ltd.(http://www.tenagraobservatories.com/c2017-u1-panstarrs-the-first-interstellar-comet-ever-25-oct-2017/) ・News | Small Asteroid or Comet ‘Visits’ from Beyond the Solar System(https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=6983&utm_source=iContact&utm_medium=email&utm_campaign=NASAJPL&utm_content=comet20171026
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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