音楽家の夢破れホームレスに。歯磨き粉で食事も……。異色の世界的デザイナーが「クラフトビール」に挑むワケ

ミュージシャンの夢破れホームレスに。アメリカで再起

クラフトビール03

取材に応じてくれたデザイナーの片岡氏。(画像は本人提供)

 アメリカで成功を納めた片岡氏だが、その才能が世に出るまでには紆余曲折があったという。  高校卒業とともに、ロックミュージシャンを目指して上京。プロとして音楽活動をしていたが、突然の契約終了がレコード会社から告げらた。収入は途絶え徐々に生活は苦しくなる。飢えをしのぐため、歯磨き粉を食べ続けた経験もある。最終的にホームレスに転落し、約2年間、西新宿で路上生活をしていた。  その後、兄のツテを頼りに何とかアメリカに渡米したものの、具体的なビジョンはなく、タイヤホイールのブローカーをしていた兄について歩く日々だった。  転機が訪れたのは、ホイールメーカーの工場で何気なくサインペンでダンボールに落書きをした時のことだった。片岡氏はこう振り返る。 「俺の落書きからデザイン性を見い出したメーカーの社長が『これを書いたやつを探せ』と言ったようで、2日後に俺が呼ばれました。その場で『お前、デザイナーをしろ』とオファーをもらったのがホイールデザイナーになったキッカケです」  その年、ラスベガスで開催された世界最大のカスタム&チューニングカーの祭典「アメリカSEMAショー」でデビューした片岡氏。100万人が参加した人気ホイール投票で1位を獲得し、鮮烈なデビューを飾った。 「一気にスターダムにのし上がった感じですね。『ド素人のマグレだ』という周りの声もありましたが、それを黙らせるために翌年、その翌年も投票で1位を獲りました」  片岡氏の斬新なデザインは、その後世界各国でオーガニックデザインのホイールブームを起こし、多大な影響を与えた。’02年からはフリーランスへ転向し、世界15社のホイールメーカーのデザインを担当。ホームレスだった青年がサインペン1本で掴んだアメリカンドリームだった。  しかしその後、マスコミとの軋轢や、自分のデザインを模したコピー商品が氾濫する状況に嫌気が差したこともあり、一時的に第一線から身を引くことを選択している。
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「夢麦酒太田」と出合い
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