日立の鉄道車両不具合の深刻度は? 分岐点に立つ日本の“鉄道輸出” 業界再編に耐えられるか

 海外の鉄道事情に詳しい関係者は言う。 「現在、世界的に見ると鉄道業界は大きな再編の波の中にあります。日本企業はその中でいかに存在感を示すことができるのかが試されている」  この関係者の言う“再編”。それは、鉄道車両メーカーとして“ビッグスリー”に数えられるドイツ・シーメンスとフランス・アルストムの経営統合だ。 「シーメンスとアルストムの統合話は数年前から囁かれており、その過程ではビッグスリーの残り1社であるカナダ・ボンバルディアとシーメンスとの統合が噂になったこともある。今後も業界再編の動きは続くでしょう」(前出の関係者)

中国の鉄道車両メーカーの脅威

 その背景にあるのは、中国に対する危機感だ。現在、鉄道車両メーカーとして売上世界一に君臨するのは中国中車。現在は中国国内向け事業が中心だが、今後は低コストをウリに世界市場に本格的な攻勢をかけてくることは間違いない。そうした中で、競争力強化を目的とした再編が進んでいるのである。日本国内で最大手とされる日立と川崎重工も、世界規模で見れば弱小に過ぎない。 「日立のイギリス進出の成否は、日本がどれだけ存在感を示せるかの試金石。もちろん、すでに日立はM&Aなどで積極的にヨーロッパなどで事業を拡大しており、イギリスでも実績があります。ですが、急速に再編が進む中でのミステイクは痛い。日本企業にとって『日本製品の信頼感』は大きな武器ですが、それが今回の事例で『大したことないな』と思われたら致命的。コスト面や企業規模では劣るだけに、気になるところです」(前出の関係者)  果たしてどちらの見方が正しいのかは現時点ではなんとも言えないだろう。ただ、いずれにしても現在の状況は日本の鉄道“輸出”にとって非常に重要な局面であることは間違いなさそうだ。 <取材・文/境正雄>
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