ホーチミンの地下鉄建設で日本のゼネコンがやたら絶賛されている背景にある複雑な感情

 さらに、ホーチミン市民が日本企業の地下鉄建設を喜ぶのは、「反中感情」以外に、もう一つの要因がある。  それは、ホーチミン市民とハノイ市民の確執もあるというのだ。  ホーチミン在住日本人が話す。 「ベトナムは地域によって人間性がまったく違います。南部はおおらかで、北部はよく言えば生真面目、悪く言えば陰湿です。だから、ホーチミンの人はハノイ出身者を嫌っているんですよ」  ベトナムといえども、北部は冬は寒くなる。それに備えるための準備などを計画的にしないといけないことから、ハノイを始めとした北部の人たちはやや南よりは神経質になることもあり、そのへんがホーチミン市民にとっては「鬱陶しい」ものとして映るのかもしれない。
ホーチミンの高島屋

ホーチミンの高島屋。ハノイにもイオンモールができたが、商習慣の違いか、それまでは複合商業施設がハノイではあまり見られなかった

 それに、ハノイではホーチミンの人の悪口はあまり聞かないが、ホーチミンではハノイ人のことを見下したような言い方をする人がいる。北部の人が南部で働くことはあっても、南部の人がハノイにビジネスで行くことは稀だということを言っていた在住日本人もいたくらい、ホーチミン市民が一方的にハノイ人を嫌っているように見える。そんな感情が「こっちは日本のJVだ、いいだろう?」といった優越感に浸らせているのかもしれない。  いずれにしても、日本の技術が投入されることを純粋に喜んでいるホーチミン市民も多く、実際に完成すれば市民の生活はかなり変わってくる。そのときにこそ、実質的に日本企業の評価は上がるに違いない。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会