漫画家・国友やすゆきが語る、漫画業界「働き方改革」のやり方【あのサラリーマン漫画をもう一度】

 忘れられないあの漫画。そこに描かれたサラリーマン像は、我々に何を残してくれたのか。「働き方改革」が問われる今だからこそ、過去のコンテンツに描かれたサラリーマン像をもう一度見つめなおして、何かを学び取りたい。現役サラリーマンにして、週刊SPA!でサラリーマン漫画時評を連載中のライター・真実一郎氏が、「サラリーマン漫画」作者に当時の連載秘話を聞く連載企画愛にチェックイン 第4回目に取り上げるのは、引き続きサラリーマンを主人公にした漫画と言えばこの人、国友やすゆき先生。自由奔放な出版社社員を描いたバブルの金字塔『ジャンクボーイ』、バブル崩壊後のサラリーマンのサバイバル状況を予見した『100億の男』、そして中年男の煩悩が哀しく炸裂する『幸せの時間』。時代ごとに異なるサラリーマンの欲望を描いてきた大ベテランは、実は働き方改革の実践者でもあった。  今回がロングインタビューの最終回!

漫画の仕事は辞めるかも?

――『愛にチェックイン』の後、次に描いてみようと思っているテーマってありますか? 国友:うーん、実は……もうね、自分の名前での漫画仕事は辞めちゃっていいかもと思ってる。でも、物語を作ることには興味あるんですよね。だから、原作とかやってみたいな。しかも「自分が描く」と言ったら絶対描かしてもらえないようなもの。それを原作で書けないかなあ、と。名前を変えて、ゼロから新人で。それが通用するのかどうかを試してみたい。コケても問題ないので。何しろ来年から年金もらう年なので(笑)!! ――基本的にものすごいチャレンジャー気質というか、新しい道を開拓しようとし続けますよね。 国友:いや、飽きっぽいのと、広く浅くの人なの。実はね、去年お芝居も書いたんですよ。あと、バンドもやってるんですよ、ギター弾いて。なんでもやりたがりなの。やってみると無理だなってわかるんだけど。だから隣の芝生が青く見えるタイプですね。音楽も芝居も、自分で作りたい。漫画の原作も実は一回書いたことがあるの。だから手ごたえは大体わかってる。 ――もう今後は漫画を描かれないかもしれないんですね……。 国友:描くかもしれないし、描かないかもしれない。今や死ぬまで現役の方々がいっぱいいらっしゃるので、別に漫画を続けられれば続けるのも不思議ではないと思うんですけどね。なんか昔は、「原稿を描きながら突っ伏して死ぬのがかっこいい」と、あたかも美徳のように言われたけど、最近はあんまりそう思わないね。やっぱもういいかなぁって。 ――漫画にもう未練がないということですか? 国友:いや、そうではなくて……。漫画業界って、実はそんなに前向きに明るいわけでもないんだよね。まず雑誌のほうがかなり厳しくなっているじゃないですか。コミックス自体も、トータル部数は売れているらしいんですけど、内実見ると大違いで、今は1強9弱なんですよ。『ワンピース』とかがドカーンと売れて、あとは少ししか売れない。昔は僕らみたいなのがいっぱいいて、産業構造として中間層がたくさんいたのね。今違うの。ドカーンがいて、後がいない。これは構造的にいびつなんだよね。 ――でも、ネット配信はかなり伸びていると聞きます。 国友:ネット配信は好調かもしれないけど、問題は、ネット直で発信した漫画が、まだ大ヒットはしてないんだよね。つまり、相変わらず紙からの焼き直しのほうが売れるんだよ。なんでかっていうと、デジタル漫画ならではの表現構造が未だよく理解できてなくて、それを前提に作られた漫画がないからなんだよ。  それはつまり、ネット漫画ならではの編集者がまだ育ってない、ということなんですね。日本の漫画がなぜここまで売れたかというと、編集者の力のスゴさなんですよ。世界にはないんです、こんなエディターの仕事は。普通エディターが話を一緒に作るとか、ありえないんだよね。僕はまさにこのエディターの力に助けられて今日までやってこれたと思ってる。 ――確かに、漫画に限らず文章、原稿に関しても、ネットのメディアしか経験がない編集者って、ディレクションとかないことが多いですね。 国友:そうです。できないんです。それって、さっきの僕のB級誌の話と同じなんです。描いてよ、と発注するだけ。ネットの編集者とは会わないで済んじゃうので、打ち合わせもしない。
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デジタル化と合理化の徹底
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