年間700人ものパイロットが離職! 欧州LCCライアンエアーの呆れたブラック企業っぷりがスペインで話題に

相変わらずブラックな労働環境

 深刻なパイロット不足で、ライアン航空の経営者側は機長と副操縦士に対し<休暇を10日間返上して勤務すれば機長に1万2000ユーロ(156万円)、副操縦士に6000ユーロ(78万円)の特別手当を支給する>としたが、当然ながらパイロット側は<通常の勤務時に稼ぐ給与と大差がない>としてそれを却下している。(参照:「Expansion」)  それに対して、ライアン航空CEOは、<「現行の契約条件からだと、会社側はパイロットに支給している4週間の休暇の最後の週を無効にできる権利が付与されている。そして、それを来年1月に回すということが出来るようになっている」>とコメントしたという。すなわち、パイロットが反対しようがしまいが会社側では彼らの休暇を返上させて勤務に就かせることができるといっているのである。同社がどうしようもなくブラック企業だということを実によく表している。  また、待遇面以外でもパイロットの不満はあがっている。たとえば、大半のパイロットが自営業者として契約されているということだ。すなわち、本人が病気になれば医者料はパイロットの負担になる。また社会保障費の支払いもパイロットが自分で負担せねばならないということなのである。経営者側では彼らに給与を支払うだけが義務で、社員に代わって会社側が負担する費用はないということなのである。  勿論、労働協約など存在しない。労働組合も存在しない。労働条件の改善を求めてパイロットがストを敢行するという噂が流れた時も、オレアリー社長は<「どのようにしてストを行うのだろう? 会社に労働組合はないのに」>と皮肉ったほどである。(参照:「El Confidencial」)  また、ライアン航空の従業員のひとりは、例えば、経営者側では客室乗務員のことを<「販売人」という考えでいる>ことを指摘している。経営者側では機内販売を社員にプレッシャーを掛けるのに重要な要素と見ているようで<およそ150人がこの成績が不振で転勤の対象になっている>ということが6月の担当責任者が署名した書類から明らかにされたという。

社員への待遇は最低限度でいい

 オリアリー社長の言葉を借りれば、同社の社員の待遇についての考え方は、「もし我が社が塩田で私が鬼ならば、なぜ彼らはまだここで働いているんだ? 現状が不満ならさっさとよそに行けばいいじゃないか」という考え方だ。すなわち社員への待遇は最低必要限度でいいし、やめてもすぐに代わりが来ると考えているらしいと、ジャーナリストのエステバン・エルナンデスが指摘している。(参照:『El Confidencial』)  また、別の報道では、同社の元スタッフによれば経営者のポリシーは<「恐怖」を与えて従業員を維持する>ことだという。(参照:「El Espanol」)
次のページ
手痛いしっぺ返しが待ち受ける
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会