スペイン・カタルーニャ州独立問題、10月1日に国民投票実施が決定だが、混乱必至

 9月6日、カタルーニャ州で独立の為の住民投票の実施が同州議会で可決されたことは日本でも報じられた。しかし、日本の報道で基本的なことがひとつ欠けている。即ち、自治州による独立を問う住民投票は違憲行為だということである。それを敢えてカタルーニャ州政府が実行しようとしていることから問題が生じているのである。  カタルーニャ州議会は独立を州民に問う住民投票の10月1日の実施法案を可決させた。12時間の審議を経て独立反対派が議事室から退席しての投票での可決であった。  なぜ反対派が投票時に退席したのか。理由は野党としての権利を独立賛成派から選出されているフォルカデル議長が蹂躙したからである。  そもそも、この法案は2政党による連立政権が密かに草案を作成し、議会に提出したという代物。野党はその内容を吟味して修正案を提出するには僅か1時間余りしかなかった。独立反対派の野党はこの草案を吟味して修正案を提出するために審議の延長を議長に要求した。しかし、それが受け入れられず議長は議員の投票に移ろうとしたので彼らは揃って退席するという事態になったのであった。  そして、その翌日には住民投票で独立賛成票が反対票を上回った場合には、二日後にカタルーニャ共和国としての一歩を踏み出す為の法案も野党不在のまま投票が行われ可決した。

自治州政府機能強制停止の可能性も!?

 ラホイ首相は、外遊中の外相以外、内閣閣僚全員が出席しての記者会見に臨んで、「(スペインの)民主政治は断固として冷静に威厳をもって(独立を問う住民投票を実施しようとする違憲行為に)応える」と述べた。更に、「これは一つの計画を全社会に力でもって押し付けようとしている一部政治家の産物である」「行政の破滅を導くことになるそのような道を進まず、放棄するようにカタルーニャ政府閣僚に伝えたい」「私は住民投票を回避させるために如何なることも放棄することなく付与されている手段で必要なすべての手を尽くす」>と述べた。(参照:「El Pais」)  この首相の発言の裏には憲法155条の適用も可能性としてあるということも仄めかしたことになる。  155条とは<自治州が憲法に謳われている義務を果たすことなく、国家の安全と自治行政を脅かす危険が生じた場合は、スペイン政府は上院の過半数議席の承認を得た上で、その自治州政府の機能を中断させることが出来る>と謳った条項である。上院ではスペイン政府与党が過半数の議席を有しているので、上院での承認は容易に取得できる。
次のページ
何が起きるか予測不可能な事態に!
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会