日本が誇るロケットの「定時打ち上げ」、その”強み”の秘密

みちびき3号機

準天頂衛星システム「みちびき3号機」を載せたH-IIAロケットの打ち上げ Image Credit: JAXA

 三菱重工業と宇宙航空研究開発機構は2017年8月19日、鹿児島県にある種子島宇宙センターから、H-IIAロケットを打ち上げた。ロケットは順調に飛行し、搭載していた準天頂衛星システム「みちびき3号機」を予定どおりの軌道で分離し、打ち上げは成功した。

 この打ち上げは当初、8月11日に予定されていたが、2度延期されることになった。1度目は天候不良という致し方ないものだったが、2度目はロケットのトラブルでの延期だった。H-IIAの打ち上げがトラブルで延期となるのは2011年以来、実の6年ぶりのことだった。

 この間、H-IIAは15機連続で、天候以外の理由で打ち上げが延期したことがないという、高い「オンタイム(定時)打ち上げ率」を誇っていた。

 今回のトラブルによって連続記録は途切れたものの、依然としてオンタイム打ち上げ率が高いままであることには変わりない。これは他国のロケットにはない日本独自の強みでもあり、コスト面などで遅れを取っている日本のロケットにとって、大きな付加価値のひとつでもある。

トラブルの原因はシールへの接着剤の付着

 今回、トラブル(なお三菱重工では「不適合」と呼んでいる)が見つかったのは、8月12日の打ち上げ直前のことだった。

 すでにロケットは発射台に立っており、準備も順調に続いていたものの、点検中にヘリウムの入ったタンクからヘリウムが漏れていることが判明した。もともとこのヘリウムは、ある程度は漏れるようになっており、今回漏れていた量も許容範囲内ではあった。しかし、その量が過去にないほど多く、飛行中にその漏れが増大し、ロケットが正常に動かなくなり打ち上げが失敗する危険もあったことから、調査が行われることになった。

 だが、この調査で原因は特定できず、12日中に解決できる見込みが立たなかったことから、この日の打ち上げは中止。ロケットは組み立てなどを行う施設に戻されることになった。

 その後の調査で、ヘリウムタンクにある蓋にあるシール(漏れを防ぐ部品)に、異物が付着しており、そこからヘリウムが漏れていることが判明。部品の交換が行われ、8月19日の打ち上げは無事に成功した。

 この異物というのは、ロケットの機体に断熱材を貼り付けるときに使う接着剤だったという。何らかの理由で接着剤の一部がシールに付着し、そのまま取り付けてしまったために、今回の問題が起きたと考えられている。接着剤が付着した理由は不明なものの、今回のロケットの組み立てでは、部品の到着時期などの都合から、いつもとやや異なる手順、環境で行われており、これが遠因となった可能性が挙がっている。

 三菱重工では今後、他の部分も含め、このようなことが起こらないよう、改善や対策を行っていくとしている。

 実のところ、こうしたトラブルは、どうやっても完全に防ぎきれるものではない。そのため、なるべくトラブルを防ぐための仕組みを取り入れるとともに、打ち上げ前にこうしたトラブルを見つけ出し、打ち上げ失敗という最悪の事態を起こさないための仕組みが機能している必要がある。

 その点では、まさに今回は打ち上げ前にトラブルが発見でき、失敗を防げたことは評価できよう。トラブルそのものもまた、今後のロケットの安定した運用に役立つ、新しい知見が得られた、という評価が妥当であろう。

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